近縁種による交雑は生物多様性に深刻な影響を及ぼします。
オオサンショウウオ Andrias japonicus は日本固有の両生類ですが、大陸からチュウゴクオオサンショウウオ Andrias davidianus が移入されたことにより交雑が生じていることが知られています。
京都市の賀茂川流域は交雑が初めて報告された地域で、30年以上前から交雑の進行が指摘されてきました。2024年7月からはオオサンショウウオを除くオオサンショウウオ属およびオオサンショウウオ属と同属他種との交雑個体が特定外来生物に指定され、管理が行われています。
しかし、野生個体の実態については不明点が多く、効率的な管理に必要な情報が不足していました。そうした中で、滋賀県立大学と京都大学の研究グループは賀茂川におけるオオサンショウウオ属の動態を推定し、その実態を明らかにしました。
この研究成果は「Japanese Journal ofConservation Ecology」に掲載されています(論文タイトル:賀茂川におけるオオサンショウウオ類の個体群サイズ推定)。
日本固有種オオサンショウウオ
オオサンショウウオ Andrias japonicus はオオサンショウウオ属に分類される世界最大級の両生類です。
オオサンショウウオ類(提供:PhotoAC)本種は日本固有種であり、岐阜県以西の本州・四国・九州の一部に生息。環境省のレッドリストでは絶滅危惧II 類に指定されているほか、国の天然記念物でもあります。
チュウゴクオオサンショウウオとの交雑
元々、日本のオオサンショウウオ属はオオサンショウウオのみでした。
しかし、1970年頃に中国大陸を原産とするチュウゴクオオサンショウウオが食用として持ち込まれたとされており、現在は日本国内に定着。このチュウゴクオオサンショウウオは在来種のオオサンショウウオと交雑することが知られています。
オオサンショウウオとチュウゴクオオサンショウウオの交雑は、京都市の賀茂川(かもがわ)流域で初めて報告。賀茂川では30年以上前から交雑の進行が指摘されていました。
交雑個体が特定外来生物に指定 野生個体群の実態は不明
時は流れて2024年7月、オオサンショウウオを除くオオサンショウウオ属およびオオサンショウウオ属と同属他種との交雑個体が外来生物法に基づき特定外来生物に指定されました。
オオサンショウウオ類について管理が強化された一方で、野生個体の実態については不明点も多く、効率的な管理に必要な情報も不足していたといいます。
そこで、滋賀県立大学と京都大学の研究グループは賀茂川における、オオサンショウウオ類の動態を推定し、その実態を明らかにしました。
4つのグループに分類して推定
今回の研究では、2005~2021年に京都大学や京都市天然記念物事業の関係者などが賀茂川で行った134回の調査データをもとに、オオサンショウウオ類の個体群サイズが推定されました。
しかし、調査が不定期であることに加え、オオサンショウウオ類は夜行性であることから発見が難しいことから、特殊な手法により個体群の動態が推定されています。
発見率は0.08パーセント未満
解析では賀茂川のオオサンショウウオ類を4つのグループ(在来種、外来種、雑種第1世代、世代不明の交雑個体)に分類され、個体群サイズの経時変化が推定されました。
その結果、2021年の時点で賀茂川の大部分を占める推定2822個体が「世代不明の交雑個体」に置き換わっていることが明らかになりました。
また、在来種は推定4.5個体と非常に少なく、純粋な外来種も推定31個体とかなり減少していることがわかっています。
オオサンショウウオ類(提供:PhotoAC)一方、調査が開始された2005年では雑種第1世代が最も多く、16年間で世代不明交雑個体に置き換わったことが示されました。1調査あたりのオオサンショウウオ類発見率は0.08パーセント未満と非常に低いことも推定されています。
このことは、現在の手法で定着した交雑個体を防除することがいかに困難であるを示すものとなりました。
効率的な手法の開発へ
今回の研究により賀茂川のオオサンショウウオはほぼ絶滅状態にあること、交雑個体の世代交代が進行していることが明らかになりました。また、研究で示された1調査あたりの発見率の低さは定着した交雑個体を防除する難しさを物語っています。
今後のオオサンショウウオ保全を進めていく上で、より効率的な調査・捕獲の開発、保全の対策が重要と考えられています。
(サカナト編集部)