赤潮被害をもたらすプランクトン「カレニア・ミキモトイ」に対し、その細胞の中に入り込み増殖して殺す寄生生物が大阪湾で見つかりました。
この寄生生物は、赤潮の原因となるプランクトンだけを狙い撃ちし、ほかのプランクトンにはほとんど影響を与えないことから、将来の赤潮被害対策につながる新たな手段として期待されています。
研究成果は、国際科学誌「Communications Biology」で2025年12月9日に公開されました。(論文タイトル:Biological control potential of red-tide marine dinoflagellate blooms by an Amoebophrya parasitic killer)
赤潮プランクトンに「天敵」を発見
カレニア・ミキモトイは、日本を含むアジア沿岸を中心に世界各地で「赤潮」の原因となるプランクトン。日本沿岸における赤潮について、過去30年間の漁業被害額は累計90億円に達するとも報告されています。
赤潮(提供:PhotoAC)マダイやブリ、シマアジ、トラフグ、マカキ、アコヤガイなど養殖魚介類の大量死を引き起こすことから、1回の赤潮で被害額が数十億円規模にのぼるケースもあります。
東北大学、西日本各地の研究機関などからなる研究グループは、このカレニア・ミキモトイに寄生して殺藻する新種の寄生性渦鞭毛藻「Amoebophrya(アメーボフリア)」の一種を大阪湾で世界で初めて発見し、単離・培養に成功しました。
室内実験では、この寄生生物を加えるとカレニア・ミキモトイの密度が大きく抑えられ、数日でほぼ消滅することが確認されています。
赤潮だけを狙う高い選択性
研究グループが培養に成功した寄生性渦鞭毛藻は、カレニア・ミキモトイの細胞内に侵入して増殖し、宿主の細胞を破って外へ出るというサイクルを3〜4日で繰り返します。
実験では、寄生生物を加えたフラスコでは赤潮プランクトンが消滅し培養液が透明になったのに対し、加えなかったフラスコでは高密度のまま増殖を続けました。
この寄生生物は珪藻など無害なプランクトンには寄生せず、有害な赤潮原因プランクトンだけを選択的に減らす高い選択性を示しています。
赤潮の予測と「天敵製剤」への期待
今後は、この寄生生物がどの海域に、どのくらい存在し、どのような環境条件で寄生が起こりやすくなるのかを明らかにする研究が進められます。
寄生が活発になる条件がわかれば、その年の赤潮の規模や収束時期をより正確に予測できる可能性があります。
また将来的には、この寄生生物を「天敵生物」や「天敵製剤」として応用し、全国で発生するカレニア・ミキモトイ赤潮の発生抑制や被害軽減を図る新たな防除技術としての実用化が期待されています。
(サカナト編集部)