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岡山県瀬戸内市の牡蠣養殖海域が<自然共生サイト>に登録 アマモ保全や生態系保全を評価

MSC認証を受けた岡山県瀬戸内市邑久町の牡蠣養殖海域が、環境省の「自然共生サイト」に登録されました。

里海づくりとサステナブル漁業の先進事例として、漁業者主体の取り組みが公式に評価された形です。

アマモの保全・再生活動などを評価

環境省は、生物多様性の保全に寄与する地域の取り組みを「自然共生サイト」として認定しています。

今回登録されたのは、「瀬戸内市邑久町 牡蠣の恵みと未来の海の維持・保全計画」。対象となったのは、MSC漁業認証を取得している邑久町漁業協同組合の牡蠣養殖海域で、豊かな海洋生態系を守りながら持続可能な漁業を続けてきた長年の取り組みが評価されています。

漁業者が取り組む底生生物調査の様子(提供:株式会社UMITO Partners)

申請にあたっては、株式会社UMITO Partnersが支援。2019年には、同社の伴走のもと、株式会社マルト水産が主導し邑久町漁協と共に進めたプロジェクトにより、牡蠣の垂下式漁業として世界で初めてMSC漁業認証を取得しています。

瀬戸内市邑久町は古くから牡蠣の産地として知られ、瀬戸内海国立公園内に位置する海域には、希少なスナメリやアマモ場など多様な生き物が生息。一方で、干拓などの影響により瀬戸内海全体でアマモ場の減少が問題となるなか、邑久町漁協では2012年から漁業者を中心にアマモの保全・再生活動を継続してきました。

アマモは魚類の産卵場や稚魚の育成場となるほか、有害藻類の増殖を抑える役割を持ち、牡蠣養殖の環境を支える重要な存在とされています。

世界水準のサステナブル漁業モデル

今回登録された計画は、「マガキやアマモをはじめとした在来の海洋生物が健やかに育つ、生態系バランスのとれた漁場の維持」を目標に、3つの柱で活動を進めるものです。

1つ目は<アマモの保全・再生>で、漂流した花枝を回収し、種子の成熟から種まきまで一連の作業を行うことで藻場の再生を図っています。

成熟して種が付いたアマモの花枝(かし)(提供:株式会社UMITO Partners)

2つ目は<漁場の生態系保全>で、養殖用のいかだの密度や水質の管理、季節に応じたいかだ移動、希少種への配慮など、養殖の現場でできる工夫を積み重ねています。

3つ目は<環境教育・啓発>で、取引先や消費者、学校関係者などの見学・体験受け入れのほか、漁協施設での展示を通じて「海と人のつながり」を伝えています。

モニタリング体制も特徴的で、潜水やドローンによるアマモの生育状況確認に加え、MSC認証の基準に準拠して水質や牡蠣の成長、底生生物の変化、スナメリやウミガメ類の目撃情報などを継続的に記録しています。

こうした科学的根拠に基づくモニタリングを基盤に、漁業者自らがデータを読み解きながら漁場管理の改善を進めている点が、世界水準のサステナブル漁業モデルとして注目されているようです。

パルシステムと連携したアマモの種取り・播種活動(提供:株式会社UMITO Partners)

また、取り組みは漁協だけで完結せず、瀬戸内市や生活協同組合、食品企業などとの連携によって、アマモの種の回収・播種活動や体験学習が行われていることも大きな特徴だといいます。

「次の世代へ受け継ぐ大切な宝」

自然共生サイト制度は、2030年までに陸と海の30%を保全する国際目標「30by30」の達成に向け、国立公園などの保護地域だけでなく、企業や地域団体による自主的な保全区域を可視化するために設けられました。

今回、日本最大級の海域が登録対象となったことで、“地域発の里海づくり”が国際目標を支える事例となったといえるのかもしれません。

邑久町漁協の松本正樹代表理事組合長は、邑久町の海について「単なる漁場ではなく、暮らしを支え、次の世代へ受け継ぐ大切な宝」だとし、今回の認定は先人と現在の漁業者の努力の成果だとコメントしています。

(サカナト編集部)

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