ニホンウナギは海で生まれ川で成長する魚類です。しかし、河川を横断する堰などの人工物は、生物の移動を妨げてしまいます。
そこで設置されるのが「魚道」という構造物です。日本では主に階段式の魚道が普及しています。
魚道により魚は下流から上流へと移送することが可能です。しかし、小さなウナギでは魚道を通れるとは限りません。
どの程度の水位差やどんな流れが障害になるのか調べる必要がある中、弘前大学の研究グループは全長が平均15センチのニホンウナギを対象に、階段式魚道の一部を実物大相当で実験水路に再現。ニホンウナギの動きの記録や水の速さと向きを測定しました。
この研究成果は『Journal of Ecohydraulics』に掲載されています(論文タイトル:Effects of overflow hydraulics on passage of juvenile Japanese eels(Anguilla japonica) in pool-and-weir fishways)。
魚の移動を助ける魚道
絶滅が危惧されるニホンウナギ。本種は海で生まれた後、川や湖へ遡上し成長します。
そのため、堰などで移動を阻害されると、上流の生息場所が利用しにくくなってしまうのです。
ウナギを守るためにも小さなウナギが移動できる川作りが必要とされています。
魚道(提供:PhotoAC)こうしたウナギなど魚の移動を助けるために設けられるのが魚道です。しかし、魚道があってもそこを小さなウナギが通れるとは限らないといいます。
そのため、どの程度の水位差や流れが障害になるのか調べる必要がありました。
階段式魚道を再現
そこで研究グループは、階段式魚道の一部を実物大相当で実験水路に再現。
プールを区切る壁の上端に45度の斜面を設置し、隣り合う水面の高さを5センチ差、10センチ差、15センチ差に変え上流へ通過できるのか検証。壁の上の流れる水の深さは15センチと20センチとされ、合計で6条件で比較が行われました。
実験は全長が平均約15センチのニホンウナギを対象に実験が行われ、ビデオカメラによる記録でニホンウナギの動きが記録されたほか、流速系で水の速さと向きも測定されています。
水位差によって通過成功率が異なる
実験の結果、水位差によって通過成功率が異なることが明らかになっています。
具体的には、水位差5センチでは通過成功率が74~86パーセント、10センチでは25~70パーセント、15センチでは37回の挑戦で一度も成功しなかったといいます(魚の大きさや壁の形状など今回の実験条件に限られる)。
国内の魚道は水位差が15センチ以上のものも少なくないといい、この結果は現存する魚道では形状や流れの条件によって、小さなウナギの遡上が阻害される可能性を示すものとなりました。
水の流れと通過成功率
通過に失敗した81回のうち68回では、壁の傾きが変わる2カ所のいずれかから5センチ以内で魚が押し戻されていることが判明しています。また、その周囲の流速は毎秒約1.1~1.7メートルと、流れの速さも向きも局所的に大きく変化していたようです。
速い流れに加え、こうした急な流れの変化が、通過をさらに難しくしている可能性がある考えられています。また、ウナギは壁を超える流れに近づく時、水路の壁面やプールを区切る壁の表面近くを通る傾向が確認されています。
壁の近くは比較的流れの遅い場所がでやすいです。そのため、魚道ではこうした通り道を途中で途切れさせないような工夫が、魚の通過を助けるうえで重要であると考えられています。
これらの結果から、小さなウナギが通りやすい魚道をつくるためには、水の流れや水位差に考慮することが重要であると示すものです。
水生生物が通過しやすい魚道の設計に貢献
今回の研究によって、全長が20センチ以下の小さなウナギでは、プールを区切る上端に45度の斜面を持つ魚道を設計・改修する場合、一段ごとの水位差を15センチ未満に抑えることが目安になることが示されました。
また、流れが急に変わる場所を減らすことも効果的と考えられています。ただし、15センチ未満であれば必ず通過できる意味ではないとし、壁の形状やウナギのサイズが異なれば、通過できる条件も変わる可能性があるとのことです。
研究グループは今後、壁の形やウナギの大きさを変えた実験と、実際の魚道での観察を進め、小さなウナギを含む、多様な水生生物が通りやすい魚道の設計に貢献したいとしています。
(サカナト編集部)