最も高級な魚といえば何を想像しますか?
クロマグロ、アカムツ、クエ……日本国内においてはこれらの魚たちが高級魚として知られています。しかし、世界にはこれらを凌駕する高級魚が存在するのです。
この記事では“海のコカイン”とも呼ばれるトトアバについてご紹介します。
トトアバとは?
トトアバ(Totoaba macdonaldi)はスズキ目ニベ科トトアバ属の分類される魚です。本種は全長2メートルにも達する大型魚で、英語でそのままTotoabaと呼ばれています。本種はメキシコ・カリフォルニア湾に固有の魚で、他の地域では見られません。
世界中に生息する魚類の情報を集約した「fish base」によると世界のニベ科は67属298種が知られていますが、トトアバ属の魚はトトアバのみです。しかし、本種の特筆すべき点は1属1種であることではなく、その希少性及び市場価値にあります。
トトアバは需要が高い魚ですが、といっても身が食肉として利用されることだけがその理由ではありません。国によっては浮き袋に価値があるのです。
浮き袋とは魚類が持つ器官の1つ。浮き袋の内部にはガスが入っており、主に浮力を得る役割を担っています。
ニベ科の魚は発達した浮き袋を持ち、トトアバも例外ではありません。ニベ科の魚は浮袋を使い鳴くことも知られ、日本でニベ科の魚をグチと呼ぶ理由は、浮き袋を使って鳴く様子が愚痴をこぼしているように見えるからともいわれています。
また、ニベ科は浮袋が種によって形質が異なることから種同定にも用いられます。
乱獲により個体数を減らすトトアバ
中国では魚の浮き袋(魚肚)がフカヒレ、アワビ、ナマコと共に四大海味に数えられ、これらの乾物が高級食材として知られています。
魚肚には様々な薬効があるとされており、中国ではニベ科などの浮き袋を使って製造されるようです。中国南部の固有種であるChinese bahaba(Bahaba taipingensis)の浮き袋は非常に重宝されていたものの、乱獲により数が減少していきました。
Chinese bahabaの減少を受け、売人たちはメキシコのトトアバに目を付けた結果、浮き袋の取引は中国からメキシコまで広がったのです。トトアバの浮き袋は時に黄金よりも高値で取引されることから、メキシコ政府がトトアバ漁を全面禁止した後も密漁が後を絶たないようです。
かつて、メキシコ・カリフォルニア湾に多く生息したトトアバは乱獲により個体数が減少。現在、トトアバはIUCNのレッドリストでVU(危急種)に分類されている他、ワシントン条約の付属書Iに挙げられており、商業目的の取引が禁止されています。
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