私の住んでいる小笠原諸島には、岩場や岸壁の波打ち際をビョンピョンと飛び跳ねている魚がいます。
海に遊びに行くと、島の子ども達は海にも入らずにずーっとこの魚を捕まえる事に夢中になります。良い塩梅に獲りやすく獲りにくいこの感じが子ども達を夢中にさせます。でも、蓋なしバケツに入れちゃうとピョンピョンと逃げちゃうんですけどね。
島の多くの場所にいて、子ども達の遊び相手にもなってくれるこの魚の名前は「ヤセタマカエルウオ」。よく見るとちょこんと飛び出したくりくりお目々に、オスの頭には三角形のトサカがあり、とてもチャーミングなんです。
なぜ「ヤセ」なのか?
ヤセタマカエルウオはスズキ目イソギンポ科の魚で、2021年3月27日にタマカエルウオから分かれて名前がつきました。
タマカエルウオと外見上はよく似ていて、ほとんど見分けがつきませんが、分布域が異なります。タマカエルウオは琉球列島や大東島、ヤセタマカエルウオは八丈島や小笠原諸島が分布域です。
魚名に「ヤセ」と付くヤセタマカエルウオですが、痩せていないと思うんだけどなぁ。
このヤセタマカエルウオ、陸地をピョンピョン跳ねるのには理由があります。
魚なのに水中が苦手なんです! そして、エラ呼吸だけでなく、濡れた皮膚で皮膚呼吸もできるんです。
海で子どもと一緒に魚獲りをしている時、手から逃げたヤセタマカエルウオは海の中に逃げ込みます。でも、すぐに別の場所の岩や岸壁に上がってきます。
飼育している場合も、岩の上に居るか、ガラス面に張り付いているか。なので、餌も岩の上に置いた赤アミ等を食べにきます。
海では岩に生えている藻等を下向きについている口を使い、こそげとる様にして食べます。
ガラス面に張り付いている時は観察のチャンス!
お腹側を見てみると、大きな胸ビレをさらに大きく広げてお腹をぺたっとくっつけています。
“くっつく魚”で似ているハゼの仲間の多くは左右の腹ビレが癒合して吸盤のようになっています。ヤセタマカエルウオは大きな胸ビレをめぇいっぱい広げてくっついていますが、じわじわと水面に下がってきます。
海水に入ると、体をくねらせてまたよじ登り始めます。動きが可愛く、ずーっと見ていられます!
船で24時間かかる小笠原に来る事が出来ない方は、都内にある葛西臨海水族園とすみだ水族館で見る事ができます。ぜひ、じっくりと観察してみて下さい!
(サカナトライター:mami)