日本で外来種というとブラックバスやブルーギルを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、国内にはサケ科の外来種が複数種生息しているのです。
中でもブラントラウトは日本でみられる唯一のSalmo属であり、駆除の対象になる一方、釣りのターゲットとしては人気の高い魚です。
この記事では、日本におけるブラウントラウトの生態や利用についてご紹介します。
ブラウントラウトとは
ブラウントラウト(Salmo trutta)はサケ科タイセイヨウサケ属に分類される大型魚で、最大で2メートルになります。
本種の原産地はヨーロッパですが、昭和初期にアメリカ経由で日本へ移入。現在、北海道や長野県、栃木県中禅寺湖、神奈川県芦ノ湖などに定着しています。
日本では外来種ではあるものの釣りのターゲットとして人気があり、ブラントラウトと呼ばれるほか「茶鱒」とも呼ばれているようです。
日本では主に河川や湖沼で見られますが、原産国では降海型も知られており、Sea trourとも呼ばれています。
ニジマスとの違い
ブラウントラウトは同じ外来種のニジマスよりも冷たい水を好み、また産卵期も若干異なり、ブラウントラウトは9~11月、ニジマスは10~3月となっています。
形態もニジマスによく似ますが、本種の尾びれに黒点がないことや体側の斑点の色が異なることから区別することが可能です。
味についてはニジマス同様に美味とされており、原産国では食用になるほか日本でも少量流通しています。
ブラウントラウトがもたらす影響
日本列島の一部に定着するブラウントラウト。本種は釣りのターゲットとして人気がありますが、外来種であるがゆえに在来種のとの競合が懸念されています。
筑波大学、長野県環境保全研究所、水産研究・教育機構水産技術研究所のチームがおこなった研究「長野県上高地における外来マス類による在来イワナへの影響」では、外来2種(ブラウントラウト、カワマス)と在来種であるイワナの競合関係を明らかにしました。
研究の結果、カワマス、ブラウントラウトどちらもイワナと競合していることが判明。加えて、大型のブラウントラウトの消化管からはイワナも発見されました。
駆除活動をおこなう地域もある
ブラウントラウトと在来種の競合は他の地域でも知られており、中には駆除活動をおこなう場所もあります。
鳥取県智頭町の河川では20年ほど前からブラウントラウトが見られるようになり、町内の三滝ダム付近で繁殖も確認されているようです。千代川漁業協同組合では電気ショッカーによる駆除活動を行っているほか、「ブラウントラウトダービー」という釣り大会を開催し釣り人にも駆除への協力を仰いでいます。
2024年も「ブラウントラウトダービー」が開催され、計234匹のブラウントラウトが駆除されました(2024智頭町ブラウントラウトダービー釣果-智頭町観光協会)。
ブラウントラウトの駆除活動は他地域でも行われており、奈良県川上村では漁協がブラウントラウト10センチ=1000円で買い上げるといった変わった取り組みを行い話題にもなりました(奈良県川上村の河川で外来種増殖 村漁協が「10センチ1000円」で買い上げ駆除-奈良新聞)。
現在、日本各地に生息するブラウントラウト。本種の移入経緯はカワマスまたはニジマスの卵に混ざっていたとも言われています。
今後、分布が拡大し生態系に大きな影響を与えないためにも、適切な管理が望まれています。
(サカナト編集部)