海洋プラスチック問題の解決に取り組む株式会社エルコム(北海道札幌市)は11月18日、広島県漁業協同組合連合会(以下、広島県漁連)にカキ養殖で使用される漁業系プラスチックを再資源化する新プラント(生産設備)を納入したことを発表しました。
このプラントにより養殖用の使用済みプラスチックをペレット(粒状の形をした合成樹脂)やチップに再資源化し、地域での循環利用を実現するといいます。
広島県漁連が新プラントを導入した背景
全国屈指のカキ養殖地である広島県。県内で使用される約1万台のカキのいかだには発泡スチロール製のフロートが使用されており、1年間に発生する廃フロートは約3万個と推定されています。
この他にもカキ養殖用プラスチック製パイプや、汚れが付着した使用済みプラスチックなどは再利用が難しいことから、処分費の負担が漁業者にとって大きな問題となっていました。
また、これらがそのまま海に放置されれば雨風により海へと流出し、回収が困難なマイクロプラスチックとなり環境へ大きな悪影響を与える危険性があります。
こうしたことから、実際に広島県における海ゴミの約60パーセントが漁業系プラスチックだといいます。
海洋プラスチック減少と燃料消費削減
エルコム社はこれらの問題を解決すべく、2007年よりマテリアルサイクルが困難な漂着プラスチックの再資源化システムの開発に着手。漁業が盛んな地域において、1万6千個以上の廃フロート燃料化を実証しました。
2011年に広島県漁連での減容実証後、2022年には日本財団・オーシャンXが主催する「海浜清掃プロジェクト」に参画しています。
新プラントでは、漁業者が自らプラスチックごみを資源化できるシステムを構築。発泡スチロール製フロートは98パーセントが空気であるため、最大40分の1まで圧縮が可能。
これによりカキ用パイプは粉砕・チップ化され、処理・保管・運搬の効率が飛躍的に上昇したといいます。
廃プラスチックの循環利用
新プラントで資源化されたペレットやチップはマテリアルリサイクル(廃棄物を新たな製品の原料として再利用するリサイクル方法)が難しいことも多いため、特殊ボイラーの燃料としての利用が検討されています。
燃料化し熱エネルギーに変換することにより、地域エネルギーとしての活用が期待されています。
同社が開発した小型ハイブリッドボイラーは、既存のボイラー設備に干渉せずに接続可能。この設備が導入されることで、海へのプラスチック流出を防止するだけでなく燃料消費の削減にもつながるとしています。
3万個のフロート=A重油換万算で約9万リットル
年間3万個の発泡スチロール製フロートが廃棄されている広島県。フロートをA重油換算すると約9万リットルにも及びます。
これらを新プラントで処理した場合、従来と比較して年間で最大244トンのCO2排出量を削減することが可能だといいます。
プラスチックごみをコストをかけて廃棄するだけではなく、新たな資源として有効活用することで、広島県のカキブランド向上にも寄与することが期待されています。
※2024年11月24日時点の情報です
(サカナト編集部)