正月料理といえば、現代では「おせち料理」のイメージが強いですが、元々は無病息災や子孫繁栄、五穀豊穣などの願いをこめて神様(歳神)に捧げる神饌(しんせん)という意味があり、中には「正月魚」という特別な魚を食べる風習も広く知られています。
正月魚のうち一風変わっているのが「塩鰹」です。
「正月魚」とは大晦日に用意される魚のこと
正月魚とは別名「年取り魚」「年越魚」ともいわれ、大晦日に用意される魚のことです。
江戸時代までは大晦日の日没の瞬間が新年の始まりでした。その日の夜に歳神を迎えるため、正月料理、正月魚は大晦日に用意され、年越魚などとも呼ばれているのです。
また、年取り魚と呼ばれるのは、江戸時代までは誕生日ではなく正月を迎えるタイミングに「歳をとる」と考えられていたためです。歳をとるという概念が1年の始まりとリンクしていて、年越しが格別なイベントとして捉えられていたことが伺えます。
正月魚は一般的に東日本ではサケ、西日本ではブリを用意することが多いようです。特にこれといって指定があるわけではなく、縁起のよい魚が用いられます。
例えば“めでたい”ので「タイ(マダイ)」といった具合です。
では「塩鰹」はなぜ正月魚になるのでしょうか。それは「しおがつお」→「しょうがつうお」……だからといわれています。
「塩鰹」とは? 現在では西伊豆の田子でのみ生産
塩鰹は漁獲されたカツオのワタを抜いて塩漬けにし、冬の乾いた風にあてることで乾燥させた保存食です。
カツオの利用方法としては、奈良時代の税金に当てられていたと思われる記録が残っており、相当古くから広く存在した食べ方と考えられます。
江戸時代に鰹節の製法が広まり、これと置き換えられることで廃れ、現在ではカツオの町として知られる西伊豆の田子でのみ生産されています。
カツオの旨味がぎゅっと詰まって塩分の多い塩鰹は少量でもご飯のお供になるうえに、お酒のアテにも最適として好まれるようです。
お茶漬けにしたり吸い物の出汁にしたり、様々な利用方法が考えられる食材だともいえます。
保存もきくため少しずつでも長く楽しめる塩鰹。新しい年のことを考えながらお屠蘇といっしょにちびちびというのも乙なものかもしれません。
(サカナト編集部)