通常、魚類はえらを使って水中の酸素を取り込みながら呼吸をしています。
しかし、ドジョウは水中の酸素が不足する環境でも生き延びることができるよう、腸呼吸や皮膚呼吸を行うこともあります。
ドジョウには、3つの呼吸方法を併用する適応力があるのです。
ドジョウの腸呼吸は酸素が乏しい水環境への適応
魚類の多くはえらを使って水中から酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するという方法で呼吸をしています。
しかし、ドジョウはえら呼吸以外の呼吸法も身につけています。それが「腸呼吸」という方法です。
腸呼吸をする際、ドジョウはいったん水面まで上がってきて、口から直接吸い込んだ空気を腸にためます。こうすることで腸から酸素を吸収できるため、水中の酸素が不足しても生きられるわけですね。
ドジョウがときどき、肛門からポコポコと水泡を出すのは、吸い込んで不要になった空気を出しているからなのです。
ドジョウが腸呼吸を行う主な理由は、酸素が乏しい水環境に適応するためであると考えられています。
ドジョウが住む泥底では、水中の酸素濃度が低いため、えらだけでは十分な酸素を取り込むことができません。
腸を使って空気中の酸素を吸収することで、酸素が不足しがちな水域でも生き残ることが可能になるのです。
空気を利用して腸の中を掃除している?
一方で、ドジョウの腸呼吸の主な目的は、空気を利用して腸の中を掃除するためであるという説も濃厚です。
腸内には、消化の過程で発生する有害なガスや不要物質がたまりがちです。腸呼吸で取り入れる空気の役割は、単なる酸素供給にとどまらず、腸内環境の改善や浄化にも関わっている可能性があるのだそう。
ドジョウの腸呼吸の理由については諸説ありますが、いずれにしても、腸からの酸素の取り込みはドジョウが健康に生きる上で非常に重要なプロセスであると考えられています。
土の中では皮膚呼吸もできるドジョウ
さらに、ドジョウはえら呼吸や腸呼吸のほかに、皮膚から直接酸素を取り込む「皮膚呼吸」も行っています。
冬眠のため泥や砂にもぐっている最中のドジョウは、低酸素状態の中でも生き延びるために皮膚呼吸を行います。
この呼吸の使い分けにより、酸素供給が不足している閉鎖的な環境でも長く生存できるのですね。
3つの呼吸方法を併用するドジョウの適応力
水中での酸素が豊富な場合はえらを使い、酸素が不足しているときや水が汚れている場合には腸呼吸や皮膚呼吸を活発に行っているドジョウ。
より効率的に酸素を取り入れるため、周囲の環境に応じて常に最適な呼吸方法を選んでいる彼らの適応力の高さには目を見はるものがあります。
もし野生のドジョウを見かける機会があれば、腸呼吸をしているかどうかそっと観察してみるのも面白いかもしれません。
(サカナトライター:糸野旬)