恋愛やホラー、アクションなど映画には様々なジャンルがあります。
では、「サメ映画」というジャンルを知っていますか?
巨大なモンスターやクリーチャーが地球上を暴れまわる……そんな作品もいいのですが、もっとおもしろいのは「身近に起こりうる恐怖」をテーマにしたパニック映画だと筆者は考えます。
今回はサメの代名詞とも言える『ジョーズ』『ディープ・ブルー』といった作品を知り尽くす人々が集まる「日本サメ映画学会」の実態に迫るべく、同会顧問でサメ映画専門のコメンテーター、そしてサメ映画の配給を行う中野ダンキチさんと、同会会長を務めるサメ映画ルーキーさんにインタビューを行いました。
果たして、どんな“フカい話”が聞けるのでしょうか……。
日本サメ映画学会の会長・顧問に突撃!
───まずはそれぞれ自己紹介をお願いできますか。
中野ダンキチ(以降、中野):中野ダンキチでございます。肩書きはですね、サメ映画専門のコメンテーター・サメンテーターという、唯一無二の職業をしております。
今現在は配給会社を立ち上げましたので、 仕事としてサメ映画の配給もしております。
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サメ映画ルーキー:僕は何になるのかな、サメ映画学会の会長になるんですかね。
定期的にイベントを開催したりとか、あるいは映画祭を開催して、皆さんにサメ映画を知っていただくという活動をしております。
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───ありがとうございます。サメ映画ルーキーさんが会長で、中野ダンキチさんが顧問をされてるということでしたよね。
中野:事実上ですけどね。サメ映画ルーキーさんがこの学会立ち上げの言い出しっぺなんですよ。年齢で言えば私の方が全然上なんですが、私が積極的に旗振りするのはまずいかなと思ったので、若い人に押し付けました。
サメ映画ルーキー:そうです。押し付けられました(笑)
中野:私がサメ映画の上映会などのイベント運営をやっていた際に、サメ映画にものすごく興味を持っていた時期のサメ映画ルーキーさんに「サメ映画学会っていうの作りませんか!」って聞かれて、始まったんですよね。
───なるほど。運営は皆さんでやられてるんですか?
中野:実際は、ほぼサメ映画ルーキーさんですね。
サメ映画ルーキー:今はそうですね。でも、ダンキチさんも外には出ますよね。運営的な根幹の部分は僕とダンキチさんメインで行っています。
他には広報部の方にイベントに出てもらって喋ってもらったり、ウェブ担当のさめねこさんに公式サイトの管理などを行ってもらったりしています。
ちゃんとした団体ではない ただサメ映画が好きな人が集まる集団
───なるほど。基本的にはそのメンバーで活動されてるんですね。
中野:そうです。そして、まず最初にご説明しなくてはいけないのは、「サメ映画学会」と名前がついていますが、ちゃんとした団体ではないということをご理解いただきたいということです。
もちろんサメ映画に関する活動はしてますが、年間で予算があってとか、スポンサーがあってとか、そういう問題ではなくて、サメ映画が好きな人が集まる集団なんです。
───そう聞くと不思議な集団に聞こえますね。学会と聞くと少し堅苦しく感じますが、まるでサークルのように、好きな人がふわっと集まる場所に「サメ映画学会」という名前を付けているのが、独特なコミュニティの形というか、なんだか素敵だなと思いました。 そんなサメ映画学会の活動内容について、ぜひ詳しくお伺いしたいです。
中野:はい。今はそこまで高い頻度で開催してるわけではないんですけど、定期的にイベントスペースを借りて、新作サメ映画の情報共有などができるイベントを開催しています。
サメ映画ルーキー:そうですね、サメ映画の上映会も開催してますが、イベント内で希望者がいれば、本物の学会のように、スライドにまとめた発表の場を設けることもあります。あと、人気投票も定期的にやってますね。
中野:本来は積極的にやってたんですが、コロナがあったじゃないですか。コロナで人が集まれなくなった影響で分断されてしまって、定期的な開催っていうのがなくなっちゃったんですよ。
ちょうどその頃くらいから、私もサメ映画ルーキーさんも映画業界の方に入ってしまっているのもあって、開催頻度は減ってますね。特に制約がある訳ではないんですが。
サメ映画ルーキー:うんうん。実際に作品を買い付けたりとか、翻訳したりとか、あるいはその上映をしたりとか。今はそっちの方に重点が置かれる感じになっているので。以前よりも活動自体は緩くなってますよね。
───なるほど。サメ映画学会に所属するのは何か手続きが必要というわけではないんですか?
サメ映画ルーキー:あ、そうですね。基本的にないです。規約とかも特に設けてないですし、退会の方法の規約とかも書いてないので、1回名乗ったらもうずっと好きなように名前を使っていただくっていう形になってますね。
───永年パスなんですね(笑)。SNSのプロフィール欄に「サメ映画学会所属」と書いてる方をお見かけしてずっと気になってたので、謎が解けました。
奇行で注目を集める「サメ映画24時間耐久」
───活動内容のページのところに「サメ映画24時間耐久」とあったのですが、すごく面白そうですので、そちらの企画についてぜひ伺いたいです。「ルールは24時間サメ映画を見ることのみ」と記載がありましたよね?
中野:そうです、そうです。
───本当に24時間も見るんですか。
サメ映画ルーキー:見ますね(笑)。僕がやっていたのは4、5年ぐらい前ですが、まだやっている人も見かけます。この企画の目的はどちらかというと、奇行を繰り返して注目を集めて、サメ映画や作品自体の知名度を上げるのが1番の目的だった活動でした。
過酷な環境で過酷な作品を見るとどうなるのかっていうのが個人的に気になってた部分でもあったんですけどね。ただ、より辛いだけでした(笑)
───より辛かっただけ!? なんかこう……見えてきたことみたいなのないんですか。
サメ映画ルーキー:特にないですね(笑)
でも、自分の中でイベント性を持たせないと「もう1回見るのは辛いな」みたいな作品はあるので、それを無理やり自分に見させるためのイベントでもありますね。
───すごい……。過酷すぎますね。
サメ映画ルーキー:そうなんです。
日本サメ映画学会立ち上げの裏側とは?
───学会の方の設立の経緯や理由も詳しく伺いたいなと思います。
サメ映画ルーキー:僕が学会に関わり始めたのが2018年です。その時点で、ジャンルとしての「サメ映画」はすごい有名ではあったんですけど、 まだ全然体系化されてないところがありました。
例えば、現段階で何作品サメ映画がこの世にあるのかとかですね。その時点で合意が取れてなかったんですよ。
そういった作品のリストや、サメ作品に関する基本的なデータが無かったんです。とにかく情報がどこにもちゃんと集まってない状況だったので、そういうのを集めて、検討できるような場を作りたいなと思ってたのが、学会設立のきっかけですかね。
───サメ映画のデータというのは、「どこからどこまでがサメ映画なのか」みたいな話ですか?
サメ映画ルーキー:そうです。そういうのも入ってくるので、1人で決められることではないんですよね。なので興味がある人たちが集まって、「これはサメでいいか、サメじゃないか」みたいな、そういうことを決めるような場所がほしかったんです。
───サメ映画学会の方は傍から見てても目を引く活動をたくさんしてらっしゃってますよね。1番面白かった学会の活動がありましたら、ぜひお聞きしたいです。
サメ映画ルーキー:2018年の学会発足当時に開催した「サメ映画総選挙」ですね。やっぱりそういう人気投票とかって、実態があるにせよないにせよ、ある程度権威が ありそうな人たちがやらないと意味ないじゃないですか。
だから学会基準の、信憑性がある人気投票をやりたかったんです。でも結果を見てみると、ものすごく偏った結果になった記憶があります。
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第1回の受賞作品は『シャークネード カテゴリー2』。1回目の結果に関しては、結構みんな納得した結果だったと思うんですけど、2019年11月に第2回を開いた時、『デビルシャーク』(現在の邦題は『エクソシスト・シャーク』)の、一部の熱狂的なファンがものすごい数の投票をして1位になってしまったのを覚えています。
サメ映画に対する間口を広めるため広げるためにサメ映画学会を運営してたはずなんですが、いつの間にか本格的なカルト集団になってしまったのを感じました(笑)
中野:他にも、「シャークインパクト」っていうボードゲームがあって、「サメ映画学会の公認をしてほしい」と頼まれたので、我々2人でその会社さんに行って、一応我々もアイデア出しましたけど、全部却下って言われましたね(笑)
それが東京ビッグサイトで開催された「ゲームマーケット」というイベントに出品されたので、その会場内で第2回総選挙の投票をしました。第3回以降は、もう本当に熱烈な組織票がバンバン入っちゃうような感じでしたね。
サメ映画ルーキー:うん。結局のところ、一番中立性と代表性があったのは、第1回でした。
そこから2年間、イベントを不定期に開催開催していた時期があったんですけど、その期間でサメ映画学会っていうものに興味を持ち続けた人たちがどんどん精鋭化したのが如実に分かったのが、第2回の結果だったので、果たしてこれはやってよかったのかどうかっていうのを考えさせられた選挙でした。
<サメ映画史>に衝撃を受ける
───中野さんはいかがですか。
中野:私は結構衝撃的だった思い出がありますね。これはサメ映画学会の根幹になりえるんですが、「LOFT/PULS ONE」という場所で「東京国際サメ映画祭」というイベントを開催されたんです。イベント名に映画祭ってついていますが、事実上、当時映画は1本しか上映しなかったんです。
それが派生していって、2018年に多摩映画祭(TAMA CINEMA FORUM 映画祭)で「東京国際サメ映画祭としてのイベントをやってください」と呼ばれたんですよ。その時にサメ映画ルーキーさんが、<サメ映画史>について発表したんですね。
その発表が私の中ではすごいカルチャーショックで、「こういう映画の見方・伝え方があるのか!」と衝撃を受けました。
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そういうことやる人が今まで誰もいなかったのと、こういう楽しみ方ってあるんだなっていう衝撃でした。これ以降、このパワーポイント(スライド)での発表スタイルっていうのがサメ映画学会になった時に提唱されて、「発表する時はパワポで」みたいな流れができ上がっていきました。
そういった意味で、東京国際サメ映画祭で見たスライドはすごくインパクトありましたね。「こんなこと考える人がいるんだ、この人すげえな!」みたいな感じになりましたね。
サメ映画ルーキー:その時は学生でまだ大学院に行ってた時期だったので、 大学院でやってるような研究発表と全く同じスタイルでパワポを作って、研究発表として見れるようにしようと思って作りました。
中野:(パワポのスライドでは)歴史を遡ってて、本当にしっかりとサメ映画の初めに『ジョーズ』っていうのがあるけど、それ以前にもサメ映画が存在していることを論じてたり。
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この頃はサメ映画の定義もそこまではっきりと作られてなかった頃でしたが、「サメが出る映画」という独自の条件を付けて、モノクロ時代から過去の作品をどんどん時系列順に紹介してくれてるという形になってますね。
本当にすごいです。今見てもちゃんとしてます。
本来の「サメ映画」の定義・ジャンルとは?
───今で言うと「サメ映画」というジャンルは確立しているように思いますが、スライドのお話を聞くに、その当時はサメ映画はホラー映画とかアクション映画などに分類されてたっていうことですか?
サメ映画ルーキー:そうですね。モンスターパニック(キングコングやゴジラなどのジャンル)とか、アクション、パニック、ホラーのどれかかな。
───なるほど。ちなみに、サメ映画学会ではサメ映画の定義を言語化しているのでしょうか。
サメ映画ルーキー:そうですね、まだふわっとはしてますけど。
中野:私の記憶の中で言えば、「サメ映画」とは次のようなものです。
・宣伝の際に「サメ映画」関連のキーワードが入っているもの
・ジャケットやパッケージにサメが入っている
・アニメとかドキュメンタリーは除外
・15分など短編は除く
特にアニメやドキュメンタリーはサメが出ていても違う話になってくる可能性が高いということで、我々の中では除外していますね。それから、サメ映画学会発足当初の頃は、「サメによる恐怖演出があるもの」という条件もありましたが、そこは今崩れつつあります。
サメ映画ルーキー:そうですね。定義の中でも特にふわっとしているのは、「『ジョーズ』的な要素を含んでる作品か」という点です。
ジョーズもそうですけど、 ジャケットなりポスターなりにサメがドーンと映ってますよね。それを見たら、大多数の人は「これはサメ映画だ」という風に判断せざるを得ないと思っています。
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あと、タイトルに「サメ」「シャーク」、あるいは「ジョーズ」が入ってたりとか、そういうサメを押し出したようなタイトルが、原題や邦題でついてたりしたら、それも外側だけで見てこれはサメ映画だっていう風に判断するようにしています。
でもそれだけじゃなくて、映画の中で「サメが人を襲う」っていうのが一番重要な要素です。サメが人に危害を加えるような描写はやっぱり、サメ映画として重要だなっていう風に考えてます。
───なるほど。「サメによる恐怖演出」は確かに基本ではありますが、ありそうでなかった視点ですね。サメ映画やパニック系の映画は「人vsサメ」あるいは「○○vsサメ」という雛形に沿ったお話が多いように感じます。サメ映画の定義にのっとれば、「人間の味方のサメ」が出てくる映画は存在しないということになるんでしょうか?
サメ映画ルーキー:そうですね。定義に沿えばそうですが、古い作品で『チコと鮫』というサメと人間が友達になるという内容の映画があります。 結構変わった作品なんですけど、でもそれってジョーズのリリース前の作品なんですよね。
一応、その『チコと鮫』でも、サメが人に危害を加えそうな描写はあるので、サメ映画といえなくはないですが、ジョーズみたいに多くの人を襲うような作品ではないので。
やっぱりサメというコンテンツは映画内では、ほぼ必ず人を襲うために出てくることが多いので、 この作品は珍しい作品なんじゃないですかね。
最初に見たサメ映画と一番好きなサメ映画
───この流れで、お二人の「人生最初に見たサメ映画」の話と「今1番好きなサメ映画」の話をお伺いしたいです!
中野:私は1番最初に見たのは『ジョーズ’87復讐編』というやつです。
───普通のジョーズではなくて、復讐編なんですね。
中野:ええ、これはいわゆる『ジョーズ4』ってやつですね。多分、14歳くらいの時に映画館で初めて見たのがこれでしたね。
でも、その時は別にサメが出ているからどうってことはなかったです。怖いなぁと思いながら普通に見てました。当時はなんにも考えず見てたんですが、今歳を取ってこれを見ると、確かにツッコミどころはあって、ジョーズの1作目とは違うなっていう風に思ったりもしてます。
サメ映画ルーキー:一番好きな作品はもう圧倒的に私は『シャークネード(原題:Sharknado)』です! あれが出てきた時にはもうびっくらこいたっていうことですよ。
サメが空から飛んでくるっていうのもそうなんですけど、シリーズを追うごとにどんどん世界観とぶっ飛び具合が広がっていって。でもよく見ると、いろんな小ネタが仕込んであるんです。
もう、それを見つけるのが楽しくてしょうがなくて。こんな人も出てたんだ、あんなネタも入ってたんだっていうのが、探すのがすごい楽しかったんです。
本国アメリカの方に行って、ロケ地巡りもしているくらいですから。それぐらい思い入れのある作品です。
───ちなみに『ジョーズ’87復讐編』は見に行った理由があったんでしょうか?
中野:映画館の関係者の友人からタダ券をもらったんです(笑)
「チケット手に入ったんだけど行かないか」って言われて、なんとなく見たのがジョーズでした。
───ジョーズ1作目はその頃にご覧になっていたんですか?
中野:テレビで多分1、2回は見てたと思います。当時は多分怖がってて、何なら「怖いな」ぐらいしか印象がなかったはずなんですよね。「サメそろそろ出てくるかも」って怖がってたような気はします。
サメ映画ルーキー:僕は多分、世代的には一番最初に見た作品は『ディープ・ブルー(原題:Deep Blue Sea)』だと思うんですけど、サメ映画として認識して見ていたわけではなかったはずです。
「こういうのがあるんだ」っていう意味で、一番最初にぶち当たったサメ映画は『シャーケンシュタイン』っていう作品でした。日本の権利元が変わったので、その当時は『フランケンジョーズ』っていうタイトルで配信されていました。たまたま映画のサブスクの見放題作品リストにジャケットが上がってきて、その当時からジャケットのインパクトがすごく強かったので目を引きました。
その映画のタイトルを見て、「意味はわかるんだけど、こんな作品を撮る意味がわからない」という部分があったので、じゃあとりあえず見てみようかなと思って見たら、やっぱりすごくて。普段自分が映画館とかで見られないような表現がたくさんあって、「こんなに自由に映画を作ってる人たちがいるんだ」っていう驚きがありました。
しかもそういう作品って1本じゃなくて、1回見るとおすすめ欄に何本も何本も出てくるわけですよ。それを見て、「こんなもの好き好きな人たちがいるんだ」と衝撃を受けました。作品としてもインパクトは強かったですし、その背後に広がってるその世界の広さを教えてくれたという意味で、印象が強いですね。
監督にメールしてDVDをゲット 自主制作だからこその面白さ
サメ映画ルーキー:で、1番好きな映画ですよね……。結構時期によって変わるんですけど、今1番好きなのはドイツで作られた自主映画の『シャーキュラ 吸血鮫(原題:Sharkula)』っていう作品です。
この作品は、みんなでサメ映画メーカーのリストを作ってく過程で、タイトルやジャケットだけは出てくるんだけど、一体どんな映画なのか調べても一向にわからない作品のひとつだったんです。どうにかして見られないか、何年間か探した結果、ようやくこの映画の監督の連絡先がわかって。
で、監督にメールをして、監督が自分でやいて作ったDVDを手に入れました。それをなんか見られた時の喜びと、その中身が期待以上だったっていう感動がありました。
自主制作って、「やりたいことは伝わるけど、お金や人の関係でできないことがあったんだろうな」っていうのがあると思うんですけど、 もうまさにそんな作品でした。やっぱり時代は手作りだよなって感じさせる作品で。
だから1番好きな作品というテーマから逸れるかもしれないけど、作品を見つける楽しさもサメ映画にはあるので。自分の探究欲を満たしてくれた1本が、「シャーキュラ」っていう作品なので、そういう意味では今1番好きです。
───なるほど。監督さんにご連絡できたのはいつ頃のお話なんですか?
サメ映画ルーキー:最初に連絡できたのが3、4年前だったと思います。で、その時はまだ「シャーキュラ」のDVDを出していなかったんです。なので監督に「もしDVDを出したら送ってくれ!」って言ってあって。
そこから2年後ぐらいに、その監督のSNSで「DVD焼きました」っていう報告が上がっているのを発見して、改めて連絡をしたら快く送ってくれたんです。
───そうだったんですね。人の繋がりみたいなのもないと見れない作品もあるってことですね。
サメ映画ルーキー:そうですね。本当に自主制作の作品って、 監督本人に聞かないと、ディスクだったりその映像そのものが手に入らないケースもあります。
例えば、ダンキチさんの会社で配給しているスウェーデンの作品に『えっ?サメ男』っていうのがあるんですけど、それも版権元をみんなで探してた時期がありました。 監督のホームページがあるのが判明して、監督と連絡もとれて、ついでに配給権まで買えたってケースですね。
「これ頑張って作ったんだな」っていうのを見たい
───サメ映画ルーキーさんはCGで作られた作品よりも、個人制作の手作り感のある方が好きっていう感覚があるんでしょうか。
サメ映画ルーキー:僕個人はそうですね。CGはCGで面白い作品はあるんですけど、やっぱり「これ頑張って作ったんだな」っていうのを見たい気持ちがあるんです。
サメよりも後の話なんですが、僕は特撮も好きなので、その特撮の着ぐるみだったりを思わせる部分が強い作品だとより好きになりがちですね。
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───そういう意味では、中野さんが運営してらっしゃる配給会社NISIKURA-EXとも関係が深いですね。
中野:メインで取り扱っているのは自主制作作品ではないんですよね。何を持ってしてプロかっていうのが非常に微妙な定義にはなりますが。
一応プロの方や映像作家の方が作ってらっしゃる作品の方が多いですよね。うんうん。
サメ映画が人を惹きつける理由とは?
───私自身もサメ映画は好きですが、サメ映画にはそのジャンル独特の文化色が強いように感じます。見ない人は本当に見ないまま一生終えてしまうようなニッチなジャンルの作品だと私は思っているのですが、お二人がサメ映画に感じている魅力を教えてください。
サメ映画ルーキー:やっぱり自由なところですよね。でも完全に自由なわけじゃなくて、「サメを出す」っていう1つの縛りがある中で、新しいことだったり自分の好きなことだったりをやってる作品が多いので、作り手の意志が見えやすいんです。
「この人はこういうの作りたかったんだな」っていうのが伝わるのが僕は1番グッとくるので、単純に映像表現やストーリーが優れているものよりは、その作り手の痕跡みたいなのが逆にありありと見えてくるもの。その部分が魅力の一つなんじゃないかなっていう風に思いますね。
───中野さんはいかがですか。
中野:ちょっと話がずれるかもしれないんですけど、サメ映画のイベントに来てくださるお客さんがすごい独特なところかもしれません。
特に我々がルーキーさんと一緒にやってるような上映会なんかだと、 お客さんも優しい人が多いんですよね。なんか我々も上映始まる前に「作品がどんなものであれ、怒ったら負けだ」とかって絶対言うんですけど、それを理解した上で結構来てくださる方がすごく多くて。
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中野:ですから、その懐の深さみたいなのを感じさせてくれる作品があるっていうのが、唯一無二のジャンルかもしれないと感じます。 サメ映画って排他的な雰囲気が全然ないように感じます。もう、ホントになんでもありです。
最近はサメ映画でも、全部笑える方向に持っていくような映画の方がむしろ多かったりもするんです。そういう多様性を受け入れられる作り手やファンの人がいて、全て受け止めるサメっていう存在があるっていうのがすごくいいです。それもサメですから、誰も傷つかないっていうのがまたいいですよね。
それでいて、出てくれば一目でサメとわかるっていうのがすごく良い。背びれの三角形の印が、海面にバーっと来るだけで、「あ、サメが出てきた」っていう、そのわかりやすさもいいですよね。
───サメ映画はやっぱり自由な方が面白いですか。
中野:うん、そうですよ。自由な方がいいですよね。もうあらゆる可能性にチャレンジしてもらいたいです。
───頭が3つになっても……下半身がサメじゃなくてもですか?(笑)
中野:えぇもう!頭なんて1000までやってほしいですよ!!
サメ映画学会が目指すこと
───今後のお二人の目標であったりとか、将来取り組んでいきたいイベントの形であったりとかありましたら、教えてください。
サメ映画ルーキー:そうですね。最近は頑張ってサメ映画の統計(データ)を取っているんです。
作品を見てストップウォッチを持って、サメが何分出るかとか何匹出るかとかっていうデータを集めてる段階なんですけど、それが結構途方もないのでみんなで手分けしてやってるんですけど、まずはそのデータ収集を終わらせたいです。
───結構途方もない作業じゃないですね。今この世にサメ映画って何作品ぐらいあるんですか?
サメ映画ルーキー:今大体200本ちょっとぐらいですかね。
───もっと1万とか2万とかあるのかと思ってました!意外に少ないんですね。
サメ映画ルーキー:実はそうなんです。ゾンビ映画は本当にそれぐらいある気はします。 そう考えるとサメ映画はそんなに多くはないんですけど、大体年に10本以上リリースされているので、 数としては多い方なんじゃないかなという気がします。
───中野さんの方は何かありますか。
中野:私はちょっとね、配給会社の事業にまわってしまって、最近実はあまりサメ映画が見られてないんですよ。特に大手や中堅会社さんのサメ映画ってあんまり見られてないのですが、皆さんに見ていただけるサメ映画を1本でも増やしたいです。
サメ映画のイベントをやると、来てくださる方の年齢層が、大体20代、30代の方がメインだったりするので、すごく若いんです。楽しんでいただける方にどんどん入ってきてもらったらいいんじゃないかなっていうのはありますよね。
映画館の人にも、いつもそれは驚かれるんです。「サメっていつもこんな感じなんですか!?」って。こっちが聞きたいよって話です(笑)
───それは別に理由が判明している訳ではないんですね。
中野:なんででしょうね。でもね、やっぱり皆さんサメ映画ルーキーさんのXでの投稿だったりを見ていらっしゃる方が圧倒的に多いです。
ですから、皆さん結構そうやって劇場に来たら「サメ映画がなんたるか」みたいなものをわかってらっしゃる方が多いので、どんなひどい作品でもクレームいただいたことはほぼないですね。劇場の方にも、「なんかサメ映画のお客さん、いいお客さん多くてあったかいですよね」って言われてます。
───では最後に、無茶振りで大変申し訳ないんですが、このインタビューを読んでいる読者にお2人から一言ずつコメントをお願いします。
中野:フィクションとしてのサメ映画を楽しんでいただいて、本物のサメとは別物として楽しんでいただく。サメ映画に関しては、面白かったり怖かったりっていう体験もできるので、「どっちもいいもんだ」って感じて、楽しんでいただければいいんじゃないかなっていう風に思います!
サメ映画ルーキー:「こういう風にサメを捉えてる人間がいるんだ」っていう発見もあると思うので、楽しみ方の1つとして見ていただければいいなっていう風に思います。
インタビューを終えて
私は幼少期から水族館が好きで、サメを好きになったという経緯があります。幼いころは特に、生きている、動いているサメが大好きでした。
そんな中で、水族館より身近にサメを感じることができるものはなんだろう……と考えた時に最初に思いついたのが「サメ映画」でした。単純に映画としても楽しめるサメ映画は、特に魅力的なジャンルの作品に感じていました。
本物の生きているサメとは別物として考えても、作中で忠実にサメが描写されていればそれはそれで素晴らしいと思いますし、一方で3個頭があるサメやトルネードに乗って飛んでくるサメといったサメ映画も、それはそれで直感的に面白いと感じます。
今回のインタビューでは、そんな「サメ映画」という異彩を放つジャンルの知られざる魅力に触れることができました。
<サメ映画学会の最新情報>
2024年7月に開催された「第1回東京国際サメ映画祭」の続編企画『第1.5回 東京国際サメ映画祭』が2025年3月1日(土)と2日(日)、池袋HUMAXシネマズで開催されます。2日で4作品を特別上映するそうです。
■イベント名:第1.5回 東京国際サメ映画祭
■開催日:2025年3月1日(土)・2日(日)
■会場:池袋HUMAXシネマズ
(サカナトライター:しょうじ)