日本の海には多種多様な魚が生息しており、ほとんどの魚に学名と和名が与えられています。
魚によっては、学名と和名のほかに英名も付いており、日本と英語圏でその魚をどのように見ているのかを比較することができるのです。
例えば、ハダカイワシという和名は鱗が剥げやすいことに由来していますが、英語では発光器に由来しLantern fishと呼ばれています。
この例では、和名と英名でそれぞれ異なる特徴に着眼点を置いているものの、どちらの名前も覚えやすくしっくりときますよね。
しかし、魚によっては英名と和名で混乱が見られることがあります。その代表例がサメです。
ネコザメとトラザメ
ネコザメは日本や朝鮮半島、台湾などに生息する中型のサメで、主に浅海で見られます。水族館のタッチプールで触れ合うことができることからも、比較的身近なサメと言えるでしょう。
ネコザメの和名は頭部の形に由来していると考えられています。
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一方、世界中に生息する魚類の詳細な情報を集めたデータベース「FishBase」によると、ネコザメは英語でJapanese bullhead sharkと呼ばれ、英名には猫を意味する単語ではなく、「雄牛」などを意味する“Bull”が用いられているのです。
一方、Cat shrakと呼ばれているサメはトラザメ科であり、このほかにもヘラザメ科やサンゴトラザメ科などのサメに用いられることがあります。
トラザメとイタチザメ
トラザメをそのまま英語にした場合、Tiger sharkですが、実際にはCat sharkと呼ばれていることが分かりました。では、Tiger sharkと呼ばれているサメはいないのか?と言うとそうではありません。
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暖かい海に生息する大型のサメ「イタチザメ」は危険な種として知られる一方、見た目がカッコイイため人気のサメでもあります。
本種は体側背面の模様に因み、英語ではTiger sharkと呼ばれており、この特徴的な模様は特に小型個体で明瞭。日本では、この模様に因み「サバブカ」という別名も持ちます。
さらにイタチザメの学名はGaleocerdo cuvierですが、属名のGaleocerdoはgaleosとkerdoを組み合わせた単語であり、このうちkerdoはギリシャ語で「キツネ」を意味するそうです。
つまり、和名ではイタチ、英名ではトラ、学名ではキツネと言語によって異なる動物の名が用いられていることになります。
イタチザメとヒレトガリザメ
では、イタチを意味する英単語“Weasel”が付くサメはいるのでしょうか?
一般的によく知られているサメ類で“Weasel”が付くサメは見つけられなかったものの、FishBaseでWeaselが付くサメ類を検索するとHemigaleidae(ヒレトガリザメ科)がWeasel sharkと呼ばれていることが分かりました。
つまり、ヒレトガリザメ科→Weasel shark、イタイザメ→Tiger shark、トラザメ科→Cat shark、ネコザメ→(Japanese)bullhead sharkとなり、サメ類は和名と英名で全くことなる動物が用いられていることがわかります。
英名と和名は一致しないことが多い
このようにサメの英名と和名ではこのような例が見られ、特に動物の名前を用いた名前ではしばしば混乱を招きます。一方、和名と英名で同様の意味を持つ魚はあまりいないことも事実です。
和名では何気ない魚でも英名だとびっくりするような名前の魚もいるので、気になる魚はFishBase等で英名を確認してみると面白いかもしれません。
(サカナト編集部)