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クマノミの<餌やり行動>がイソギンチャクを成長させる? 共生関係の重要性が明らかに

海における「相利共生(共に利益を受ける関係)」の例として有名なクマノミとイソギンチャクの関係はしばしば生物研究の対象になり、これまでに様々な研究が行われています。

クマノミがイソギンチャクの触手に餌を付ける行動は19世紀から知られていますが、この行動については十分な根拠がないにもかかわらず、共生関係における重要性は低いと考えられてきました。

大阪公立大学大学院理学研究科の研究グループは、餌を与えたクマノミがイソギンチャクの触手に餌を付ける行動を目撃し、クマノミとイソギンチャクの共生関係を調査し、クマノミとイソギンチャクにおける共生関係の重要性を明らかにしました(論文タイトル:Active provisioning of food to host sea anemones by anemonefish)。

クマノミとイソギンチャク

クマノミとイソギンチャクの相利共生はこれまで様々研究が行われており、今回公表された論文ではクマノミが皮膚粘液中のシアル酸の値を低く保つことにより、イソギンチャクの刺胞を回避していることが明らかになっています。

クマノミ(提供:PhotoAC)

この共生関係では、クマノミが毒をもつイソギンチャクを住居として利用する一方、クマノミはイソギンチャクを捕食する敵を追うことでイソギンチャクと相利共生を構築。

近年の研究ではクマノミの排泄物がイソギンチャクとイソギンチャクに共生する褐虫藻の栄養になっていることが判明し、クマノミとイソギンチャクの共生関係の重要性が示されています。

他にも、クマノミとイソギンチャクの関係を示すものとして、クマノミがイソギンチャクの触手に餌を付ける行動が19世紀から知られています。

しかし、この行動はクマノミが給餌された時に起こるため、自然界で起こらず、共生関係に重要ではないと考えられてきました。

宿主に餌を付けるクマノミを目撃

そんな中、大阪公立大学大学院理学研究科の研究グループは愛媛県の室手海岸において、餌を与えたクマノミがイソギンチャの触手に餌を付ける行動を目撃します。

同研究グループはクマノミとイソギンチャクの共生について調査を開始し、2020年と2021年の夏~秋の計8ヶ月間、スキューバダイビングにより複数の実験が行われました。

クマノミにオキアミを与える実験

餌追跡実験では、クマノミの提示した餌が宿主であるイソギンチャの餌となっているかを調査。紐を結んだオキアミをクマノミに提示し、26個体のクマノミに餌が与えられてました。

実験の結果、すべてのクマノミがすぐにオキアミを宿主に付け、約1時間後には餌を横取りされた9例を除く17例の全てで、イソギンチャクの口腔から紐が出ていたそうです。

様々な条件でクマノミの行動を調査

このほかにも様々な条件でクマノミの行動が調査されています。

大きさの異なるオキアミを10個体のクマノミに与える実験では、クマノミの口に入る餌は自分で消費し、それより大きい餌を宿主に与えることが判明。

餌が植物性の場合、クマノミは小さく刻んだ柔らかい緑藻は食べるものの、大きな餌は宿主に持っていかず、硬い褐藻や毒のあるカイメンは大きさにかかわらず捨てることが分かりました。

クマノミ(提供:PhotoAC)

さらに、クマノミに繰り返し餌を与えた実験では、17回目までクマノミがすべて食べていたようですが、満腹になるにつれてクマノミが宿主に餌を与える確率が大きく上昇したそうです。

クマノミから餌を貰った方がよく成長する?

次に、クマノミの餌やり行動がイソギンチャクの成長に関係しているのか調査が行われました。

クマノミに大きな餌を与える群9例、直接イソギンチャクに餌を与える群11例、何も与えない群11例の3群を作り、3ヵ月後の成長を比較。クマノミに餌を与える群とイソギンチャクに直接餌を与える群は何も与えない群と比較して有意に大きくなっていることが判明しました。

餌やりによるイソギンチャクの成長はクマノミにとっても住居が大きくなるメリットがあり、互いに利益を得ていると考えられています。

短期的な影響も調べる必要がある

今回はクマノミへ人為的に餌を与える実験でしたが、研究グループはナマコの死骸をイソギンチャクに運搬するクマノミの何度も目撃していることから、我々の知らないところで餌やり行動が起こっていると考えているといいます。

さらに、今回はイソギンチャクの成長という長期的な影響に着目していましたが、給餌直後における宿主の変化など短期的な影響も調査する必要があるようです。

今後もクマノミとイソギンチャクの共生から目が離せませんね。

(サカナト編集部)

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サカナト編集部

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