普段の生活でふと目にしている何気ない川も、調べていくと興味深い地理的な歴史や環境が見えてきます。
筆者の地元である神奈川県には、県を分断するように「相模川」が流れています。本記事では相模川の歴史・自然環境を紹介し、またそれらを調べる・探検する面白さをお伝えします。
相模川とは
相模川は山梨県にある山中湖を源に発し、相模野を縦貫して相模湾に注ぐ全長109キロの河川です。山梨県では「桂川」と呼ばれており、この桂川が流れ始めたのは今から約70~80万年前と言われています。
桂川は富士山の前身である小御岳火山(こみたけかざん)や周辺の山々、丹沢山塊、関東山地からの水を集めて、その谷を流れ始めました。
かつては東京湾に流れていた
しかし、当時の桂川(相模川)は現在のように相模湾ではなく、関東平野の奥深くに入り込んでいた古東京湾に注いでいました。今から15万年ほど前、相模川は帷子川(かたびらがわ)に流れ込み、横浜市方向へ流れていたようです。
相模湾へと流れ込む今の流れになったのは約3万年前。筆者は長らく神奈川県に住んでいましたが、今回資料を調べて初めて知りました。まさに灯台もと暗しですね。
インバウンドにも人気の<忍野八海>

「忍野八海(おしのはっかい)」は、桂川が山中湖を流れ出してすぐの場所にある湧泉群です。
約6000年前は山中湖・忍野八海一帯は「宇津湖」と言われる大きな湖でした。山中湖も忍野八海も、富士山北側斜面の地下水が地上に湧水したものです。
つまり、相模川も元を辿れば富士山麓の地下水ということになります。

忍野八海の透き通った青い水は見る者の心を洗います。
幼少期からよく訪れていた筆者は忍野八海の美しい湧水に感動し、忍野八海をモチーフにした展示を勤務していた水族館で作ろうと試みたこともありました。
相模川の生き物
そんな相模川には、たくさんの生きものが暮らしています。
相模川に生息する鳥
春~夏にかけてはツバメが相模川の水面を飛び交います。

他にもコサギやダイサギなどが、魚を狙って水面を睨みつけている様子も観察できます。彼らがいるということは、その場所に魚が生息しているという証拠になります。

また、相模川に注ぐ小川を観察した際、カワセミやタヌキ(おそらく?)にも遭遇しました。相模川の周りで生命の営みを感じることができるのです。
相模川を象徴する魚
相模川には数多くの魚類が生息していますが、中でも代表的な魚はアユ。かつて「アユ河」と呼ばれていたほどアユで有名な川なのです。

筆者は学生時代、相模川へ毎年アユの観察に出かけていました。相模川のとある場所には魚道があり、毎年その魚道をアユたちが登っていく様子を観察できます。
相模川中流域の堰に行くと凄まじい数のアユが次々に跳ねて遡上していく光景を観察できますが、中には少ない年もありました。登っていくアユたちを無慈悲にもさらっていくアオサギなども確認できました。
地元の河川はおもしろい
相模川に限らず、面白い水辺は意外と身近にあるものです。
今回ご紹介した相模川の内容は、筆者が神奈川県内の図書館や資料室を渡り歩いて得た情報です。もちろん、これらは相模川に関する情報のほんの一部に過ぎません。
皆さんの周りにも海や川、はたまたそこまで大きくはない小川や池、沼など、さまざまな水辺があると思います。そうした水辺の歴史や自然環境を調べてみると、実は面白いものです。
近隣の図書館に行くと、その水辺にまつわる地元ならではの情報が見つかることがあります。身近な水辺を探索し、図書館などで水辺の歴史や自然環境を調べてみてください。
ネット検索が便利な時代ですが、自分の足で行って調べて探検することも、面白いものですよ。
(サカナトライター:みのり)