ヤコウガイ(夜光貝)という貝を聞いたことがあるでしょうか。
春休みで屋久島に行っていた息子が、現地の人からヤコウガイの貝殻をもらってきました。
地元の人によれば、ヤコウガイは水深10メートルほどに生息。ずっしりと重く、中身は真珠層のため、キラキラとしています。
ヤコウガイという名前の由来
ヤコウガイの日本での生息域は、屋久島以南と言われています。この「ヤコウ」という名前の由来には様々な説がありますが、「屋久島」に関係があるという一説もあるのです。
屋久島や奄美、沖縄など九州の南の島々に多く生息している大型の巻貝のことを「屋久貝(やくがい)」と呼んでいたのが転じて、「ヤコウガイ」になったのだとも言われています。

一方、漢字表記では「夜光貝」と書きます。文字通り夜に光るのかどうか、海の中で光るのかどうかを図鑑で調べてみました。
残念なことに、夜光貝は自ら光るわけではないそうです。なんて紛らわしい名前なんでしょうか。

夜の海で「光る貝を見た!」という話の多くは都市伝説に近く、貝殻に付着した夜光虫(発光性プランクトン)が刺激で光っているといいます。
屋久島の浅瀬でも、波打ち際でわずかにチカッと青白く光ることがあるそうですが、その光は本当に儚いとか。暗い海に目を凝らさないとわからないほどだと言われています。
ヤコウガイと共存する生き物たち
生きているヤコウガイは、先述の通り、水深10メートル付近でサンゴなどと共に生息。夜行性で、岩場の藻を削り取るように食べて生きています。
大きいものでは直径30センチ近く、重さは2キロにもなるというから驚きます。成長にはとても時間がかかり、稚貝が7センチほどになるのに3年もかかるそうです。
しかし今、そのヤコウガイたちが静かに姿を消しつつあるのだそうです。美しい貝殻は土産物や工芸品として人気があり、かつては乱獲が問題になったことも。

加えて、彼らの暮らすサンゴ礁の生態系が海水温の温暖化などによって乱れつつあり、これも影響がないとは言い切れません。
鹿児島県や沖縄県ではヤコウガイが重要な漁業資源のひとつとして扱われ、漁業権の対象種に指定されており、制限サイズ以下の採捕は禁止、稚貝の育成も進んでいます。
今後、さまざまな取り組みを通して、人間とうまく共存していけることを願うばかりです。
(サカナトライター:栗秋美穂)