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<マリンアクアリウム>基本設備の整え方 自宅で海水魚を飼うために必要なものとは?

マリンアクアリウムとは、<海の生きものを家で飼育すること>です。

「海水魚」と一言でいっても様々な種がおり、種ごとに生息環境が異なります。この記事では、マリンアクアリウムの定番の魚たちである温帯種もしくは熱帯種を飼育する前提で設備の整え方をご紹介します。

小さな水槽で海を再現することの難しさ

魚を飼育するということは、魚に適した飼育水を作ることから始まり、その魚たちが継続して住める環境を維持しなければなりません。これがアクアリウムの大前提です。

海という壮大な環境で生きている海水魚は水質の変化にとても弱いです。なぜなら、とてつもない水の量が存在している海では、水質の変化が比較的少ないからです。

それに比べて、家で飼育できる水槽はせいぜい30~300リットルというちっぽけな水の量。海に比べたら、水族館の水槽ですらとても小さいです。

マリンアクアリウムは綺麗で癒される反面、元々魚たちがすんでいた海を再現するという覚悟が必要な趣味となってきます。

しかし上手に自分だけの海を再現し、それを維持し、魚たちを長生きさせることができたら、何事にも変えられない大きな喜びがあります。

マリンアクアリウムに必要な道具

水槽という箱に海を再現し、維持するための道具を紹介します。

水槽

アクアリウムのメインとなるケースです。この中に自分だけの「海」を再現します。

前提として、水槽のサイズ(水の量)が大きければ水質は安定し飼育がしやすいです。

材質はガラスとアクリルがあり、好みで選択します。またどんな生物をどんな飼育をしたいかをしっかり事前に計画し、形や大きさを決めることが重要。蓋は生き物の飛び出しや飼育水の蒸発、臭い防止のため必須です。

水槽(撮影:たつ)

ガラス製の水槽は、傷つきにくいが重く、衝撃に弱いですが比較的に安価なのが特徴。一方、アクリル製の水槽は傷がつきやすく高価ですが、軽く衝撃に強いのが特徴です。

水槽の大きさは横幅30~120センチがホームアクアリウムを行う一般的なサイズで、60センチサイズの水槽が最も飼育を始めやすいおすすめの大きさです。

飼育する生きものや自身の趣味嗜好、設置場所など生活に支障がないか……などあらゆる側面から判断しましょう。

水槽台

水槽台(撮影:たつ)

水槽は専用の台に置くことをお勧めします。

自身の飼育スタイルに合った台を選択。水槽のサイズや設置場所をしっかり決め、これらを踏まえて耐荷重を確認することが大切です。

濾過装置(フィルター)

水を綺麗にする器具です。魚を飼育するためには綺麗な水を維持しなければなりません。

アクアリウムにおける濾過とは、マットや活性炭による汚れを漉し取る物理濾過と、バクテリアの力で水を綺麗にする生物濾過の2点があります。

上部式フィルター(撮影:たつ)

マリンアクアリウムの中では生物濾過がとても重要で、バクテリアをコントロールすることと水換えによる飼育水の維持が基本となります。

この基本的な考えを踏まえてマリンアクアリウムで使用するフィルターには、外部式フィルター、底面式フィルター、オーバーフロー式フィルター、投げ込み式フィルターがあります。

投げ込み式フィルター(撮影:たつ)

投げ込み式フィルターは、単体使用で海水魚を飼育することはお勧めできません。水流を作る為もしくは底面濾過と併用して使用しましょう。

外掛け式フィルターについても単体使用で海水魚を飼育することはお勧めできません。サブのフィルターもしくは底面フィルターと併用しましょう。

ろ過材

ろ過材とはフィルターの要と考えられ、本体の中に入れることで使用します。

ろ過材はろ過方式で種類が違います。一般的に、バクテリアを活用する生物濾過と物理濾過を併用。フィルターで双方のろ過を行い、水を綺麗にしていきます。

生物ろ過では、ろ過バクテリアの棲家になるサンゴ砂、リング、ボールタイプを用意することでろ過が期待できます。バクテリアを定着させるため、表面がボコボコしていたり、目に見えない穴が無数に開いているものを使用します。

物理ろ過では、ゴミをこしとるマットで物理的にろ過を行います。茶色く変色したり汚れてきたら交換する必要があります。

人工海水

海の魚を飼育するために、飼育水は海の水を用意しなければなりません。方法としては海から直接汲んでくるか、人工海水の素で水道水を海水に変える2点があります。

人工海水(撮影:たつ)

前者は確実に海水ですが、定期的に海に行かなければいけない手間がかかるのと、自然の病原菌やゴミが入ることがあるのでおすすめできません。

後者の方では水道水を使用するので、基本的に余計なものが入らない綺麗な海水をつくることができます。

人工海水は様々なメーカーから出ていますが、基本的にどれも同じですので好みのものを選択してください。

エアーポンプ

空気を水槽に送り込むことをエアレーションと言います。

魚は鰓呼吸を行いますので、常に酸素を水中に供給し続けなければいけません。

エアーポンプ(撮影:たつ)

水を綺麗にするバクテリアも酸素が必要なので、エアーポンプは欠かすことができない器具です。

水槽にエアーを入れて、簡易的な水流を作ることにより淀み防止にもなります。エアーポンプ本体の他にエアーチューブとエアストーンが必要になります。

ヒーター/クーラー

水温を維持する器具です。夏や冬では海水魚の飼育適温から逸脱してしまうので、温度をコントロールしなければなりません。

魚は変温動物なので、温度変化は体に負担が掛かってしまいます。飼育の基本として飼育温度は常に一定を保つようにしましょう。

海水魚の飼育適温は一年を通して22~28℃です。魚種や飼育の用途に合わせて温度を設定します。

ヒーター(撮影:たつ)

ヒーターには温度固定タイプ(オートヒーター)や温度の上がりすぎ下がりすぎを防ぐサーモスタット付きの温度調整タイプなどがあります。

水流ポンプ

海の中は常に潮の流れがあり、水が淀むことはありませんが、水槽では動きを起こす器具がなければ淀んでしまいます。水流ポンプは水槽の飼育水に動きをつけることによって淀みを無くすことができます。

淀みを無くすと、見ず全体に均等に酸素を行き渡らせ、汚れを溜まりにくくすることができます。

また魚を活性化させ運動させることで、エサを水槽全体に行き渡らせることができます。

水流の調整は魚の動きを観察し、水槽にあった強さにしますが、立ち上げ時の場合、ビニール片など軽いものを水槽に流し、水槽内をどう動くかで設定しても大丈夫です。

基本的には強すぎず弱すぎずのバランスで様子見ながら調整します。正解がないので長期で考えていくのも楽しみのひとつです。

+αでその他必要な物

ここまでに紹介してきた基本の設備の他にも、海水魚を飼育するために必要な物もたくさんあります。

まず、塩分濃度計。これは海水の塩分を測る器具です。適した濃度の範囲に合わせます。

塩分濃度計(提供:たつ)

水道水の塩素を中和する薬剤「カルキ抜き」も、海水を作るには必須です。

水槽専用の照明器具は水槽内を華やかにし、魚たちを楽しく綺麗に鑑賞することができます。また、生きものは日照時間でバイオリズムを整えているので、魚の体調を崩さず飼育する為には必要なアイテムとなってきます。

バケツも必須です。これらは水換えなど様々なシーンで活躍します。

底砂はサンゴ砂や硅砂などいろんな種類があり、鑑賞性が向上します。魚によっては、底砂に潜るものがいたり、底に沈んだ餌を食べるため底砂を誤飲してしまう可能性があるなど、種によって選びましょう。

ゴミが溜まるところなので掃除を定期的に行う必要があります。一度入れてしまうと簡単には取り出せないので事前計画は必要です。

試行錯誤して自分の「海」の環境を作り出そう

このように、海水魚の飼育は用意するものだけでもたくさんあります。

選択肢も多く、悩むことが多いかと思いますが、試行錯誤した設備で海という環境を作り出して大好きな海水魚を上手に飼えることには大きな喜びがあります。

様々な工夫や発見をし、新しいことを取り入れることはマリンアクアリウムの世界を盛り上げていけると思います。

(サカナトライター:たつ)

参考文献

富沢直人(2008)、ヤッコ&チョウチョウウオの世界、ピーシーズ、P194-207

松沢陽士(2014)、川魚の飼育と採集を楽しむための本、学研マーケティング、P41-47

円藤清(2011)、小型ヤッコが飼いたい!ケントロピーゲの図鑑と飼育、エムピージェー

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たつ

たつ

伊豆と僕と時々奥さん

綺麗な魚に魅せられて10年。 飼育・採集を自由気ままに続けるアクアリスト。 私と出会った魅力溢れる魚達や海水魚の飼育方法を紹介します。 誰でも手軽に読めて知識の輪を広げれたらいいなと思います。

  1. <マリンアクアリウム>基本設備の整え方 自宅で海水魚を飼うために必要なものとは?

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