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絶滅しそうな魚<ハリヨ>に魅せられて 巣作りする姿はまるで「家庭的な夫」【私の好きなサカナたち】

Webメディア『サカナト』には様々な水生生物好きのライター(執筆者)が所属しています。そんなライターの皆さんが特に好きなサカナ・水生生物について自由闊達に語らう企画「私の好きなサカナたち」。今回はサカナトライター・かいさんによる「私の好きなサカナたち」をお届けします。

私がハリヨという魚の魅力に惹かれたのは、大学生の頃のことです。私が通っていた岐阜協立大学の北方キャンパスには「ハリヨ池」と呼ばれる場所があります。

大学にはハリヨを専門に研究する教授もおり、キャンパス内では保全活動が今も活発に行われています。

学生の頃、キャンパスに通う度にハリヨを目にすることが多く、自然とハリヨの虜になっていました。

ハリヨはどんな魚?

そんなハリヨは体長5センチと小さく、背中に3本、おなかに2本、しりびれの前に1本のトゲがあるのが特徴で、そんな可愛らしい見た目に魅力を感じていました。

さらに、ハリヨには「婚姻色」と呼ばれる繁殖時期でしか見られない姿があるのです。

オスのハリヨは3月から6月にかけて頭部が赤く、体が青く変化します。

理由はメスへの求愛行動でアピールをするためと、縄張り争いでオスに対して威嚇するためだからです。「婚姻色」のハリヨの姿は鮮やかで、色彩はとても神秘的で一度見たら忘れられません。

ハリヨ(提供:PhotoAC)

また、ハリヨは巣作りをする珍しい魚です。繁殖時期にはトンネル状の巣を作るために枯れ枝を運んだり、川底の腐植質をつついて巣の形を整える光景が確認できます。

その姿を見て、まるで「家庭的な夫」のような人間味のある姿を目の当たりにしたときは思わず感動してしまいました。

ハリヨの現状

ハリヨは現在、滋賀県と岐阜県の一部に分布する希少魚で、環境省から絶滅危惧IAに選定されている状況です。

ハリヨが減少している原因は様々で、農地開発や都市化の影響で湧水や清流が減少しているからです。生息が確認されている滋賀県と岐阜県の一部では年間の平均水温が15℃と低いことが特徴で、夏季の高水温(20~25℃)の水域では生息が困難です。

さらに、生活排水による水質の悪化や外来種の魚の影響で生息環境が悪くなってしまったことも原因としてあげられます。

これらを受けて、岐阜県では「指定希少野生生物」に指定されており、県の天然記念物に指定されています。さらに、滋賀県でも県の「指定希少野生動植物種」に指定されており、保護活動が行われています。

現在は募集が終了していますが、クラウドファンディングでハリヨの保全活動の寄付の募集が行われたこともあるようです。

ハリヨが絶滅しないためにも、多くの方が関心を持ってくれることを願っています。そして、私自身もこれからもハリヨを守る活動を応援していきたいと思います。

(サカナトライター:かい)

  • この記事の執筆者
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かい

普段はリラクゼーションセラピストとして働きながら、ライターとしても活動しています。幼少期から琵琶湖の豊かな自然に触れて育ち、大学時代に絶滅危惧種の淡水魚「ハリヨ」と出会ったことで、水生生物の魅力に深く惹かれるようになりました。今ではその奥深い世界にすっかり夢中です。

  1. 絶滅しそうな魚<ハリヨ>に魅せられて 巣作りする姿はまるで「家庭的な夫」【私の好きなサカナたち】

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