独特の香りを持ち、「香魚」とも呼ばれるアユ。そんなアユの特性を活かし、柑橘の風味をまとわせた「柑味鮎」という養殖のアユがいます。
今回はそんな柑味鮎について、椹野川漁業協同組合(山口県山口市)の田中翔太さんにお話を伺いました。
【画像】鮎を生で食べる? 専門店等で提供される<アユのせごし>とは
柑味鮎って何?
柑味鮎は「かんみあゆ」と読み、みかんの皮の抽出物を混ぜた餌で育てられた養殖の鮎のこと。“みかん鮎”とも呼ばれます。
柑味鮎は、椹野川漁業協同組合と山口大学農学部が合同研究し商品化。爽やかな柑橘の風味によって川魚独特の臭みが緩和されて美味しいと、発売から10年以上に渡り多くの人に愛されてきました。
「特に内臓やひれの部分の香りが強いのが特徴」と田中さんは話します。
柑味鮎を家庭で美味しく塩焼きにするコツ
柑味鮎を美味しく食べるには、「本来は炭火で焼くのが一番美味しい」と田中さん。イベントで柑味鮎を提供する際には、炭火焼きで販売しているといいます。
イベント以外で炭火焼きを食べてみたい方は、バーベキューで柑味鮎も焼いてみるのがおすすめ。網に置くと身が崩れやすいので、串に刺し火から少し離して焼くと美味しく綺麗に仕上がります。
家庭の魚焼きグリルで焼く場合は、身がボロボロになってしまわないよう工夫が大切。「通常の鮎と同様に化粧塩を」とも教えてくれました。化粧塩とは、魚の背びれや尾びれに塩をつける調理方法で、ひれの型崩れや焦げを防ぐ目的があります。
魚焼きグリルやフライパンで焼く場合、柑味鮎を何度もひっくり返さないようにも注意が必要です。また、「グリルの場合はあらかじめ温めておくと身が網にくっつきにくい」とも話していました。
実際に柑味鮎を塩焼きしてみた

実際に、あらかじめ30秒ほど温めたガスコンロの魚焼きグリルに化粧塩を施した柑味鮎を入れて焼いてみました。
中火で片面6分ずつ。炎が出ている部分からできるだけ離すこととひっくり返しすぎないことを意識して焼いたところ、綺麗にふっくらと焼けました。
食べ方について、「好みはありますが、特に柑橘の香りが強い内臓やひれも味わってみてほしい」とのこと。私は普段、魚の内臓やひれを避けて食べるのですが、柑味鮎は香りが爽やかで美味しく食べられましたよ。
我が家ではこんな風に食べてみました
塩焼き以外なら柑味鮎は、鮎めしで食べるのが定番。山口市内の一部の道の駅などでは、柑味鮎を使った鮎めしの素も販売されており、手軽に鮎めしが味わえるようになっています。

また、田中さんによると「柑味鮎を南蛮漬けにして味わう人もいる」とのことです。
柑味鮎をあえて洋食で食べる
和食と相性が良さそうな柑味鮎ですが、今回はあえて洋食にチャレンジしてみました。
1品目は、ムニエル。

ハーブ塩をかけた柑味鮎に小麦粉をまぶし、バターで焼き上げました。バターの香りと柑橘の香りが上手く混ざり合っており、食べやすかったです。
家族には「皮まで美味しい」「塩焼きとは違った感覚で食べられていい」と好評でした。
2品目は、アヒージョに。

鷹の爪とニンニクをオリーブオイルに入れて1~2分加熱し、香りが立ったところで柑味鮎を入れ火が通るまで加熱しました(今回は12分程度)。最後にハーブ塩で味を整えて完成です。
「ニンニクの匂いに柑味鮎の香りが負けてしまうのでは」と取材の際に話題にあがったのですが、そんなことはなくしっかりと爽やかな香りを楽しめました。重くなりがちなアヒージョですが、柑味鮎なら後味がスッキリで美味しかったです。
現地に行かずとも味わえる
柑味鮎は椹野川漁業協同組合で直接購入できるほか、ネットショップや一部のカタログギフトなどでも取り扱いがあります。
味や香りの強い食材と組み合わせてもしっかり香る「柑味鮎」。気になる人は味わってみてはいかがでしょうか?
(サカナトライター:コトイロドリ)