砂の中からニョキッと顔を出して、ゆらゆらと体を揺らす姿が人気のチンアナゴとニシキアナゴ。水族館でもそのユニークな見た目と群れで揃って揺れる可愛らしさから、多くのファンを持つ魚です。
白地に黒い斑点模様が特徴の「チンアナゴ」と、オレンジと白の縞模様が鮮やかな「ニシキアナゴ」は、見た目にも分かりやすく、並んで展示されることが多い種類です。
そんな彼らの生態は興味深く、水族館では面白い行動を観察することができます。
チンアナゴ・ニシキアナゴの生態
チンアナゴやニシキアナゴは「アナゴ」と名前に付いていますが、実はウナギ目に属する魚の仲間で、いわゆるアナゴとは異なります。

海の砂地に穴を掘り、尻尾を奥深くまで差し込み、その穴の中に身を潜めながら生活をしています。細い体には、柔らかく薄いヒレがありますが、遠目からはあまりヒレが見えず、まるで砂からニョッキリと生えた棒のよう。
実は、この不思議な身体のつくりこそ、彼らの重要な生存戦略でもあります。危険が迫った時にすぐに穴に潜れるのは、このとっかかりの無いボディのおかげというわけなのです。
ちなみに彼らの主な食事は海中を漂うプランクトン。常に体の前半分だけを穴の外に出し、水の流れに乗って運ばれてくるエサをひたすら口でキャッチしています。
驚くべきことに、このような生活を送るチンアナゴたちは数十~数百匹単位で群れを作り、隣との距離を保ちながら一帯にずらりと並んで暮らしています。縄張り意識があるのか、水族館でも近くにいる者同士が互いに接近し、口を開けて威嚇し合う様子が見られます。
みんな同じ方向を向いている理由
水族館でチンアナゴやニシキアナゴたちを見ていると、不思議なほど同じ方向を向いていることに気がつきます。実はこれ、水の流れに合わせて体の向きを変えているためです。

彼らは流れてくるプランクトンを効率よく捕まえるために、流れに向かって頭を向け、まるで“海の風見鶏”のように揃って揺れています。この揃った姿がなんとも可愛らしく、人々を惹きつける理由のひとつではないでしょうか。
流れの強さによって体を出す量を変えたり、流れが弱いときには少しリラックスした姿勢を見せたりと、実はけっこう繊細なコントロールをしていることも研究で明らかになっています。こうした姿からは、ただ可愛いだけでなく、自然の中でうまく環境に適応している知恵深さも感じられます。
見られたらラッキー!? 泳ぐチンアナゴの姿
チンアナゴ・ニシキアナゴは、いつも穴からひょっこり顔を出してユラユラしており、なんだか小さくて可愛らしいと思いませんか?
実は彼らの全長は約30~40cm。水族館で私たちが見ているのは身体のほんの一部なんです。
そしてしっかりと泳ぐことのできる魚でもあります。
水族館で目撃したチンアナゴ・ニシキアナゴの珍しい姿
水族館に行くと、ついついチンアナゴ・ニシキアナゴの水槽の前に居座ってしまう筆者。先日、いつも通りチンアナゴ・ニシキアナゴの水槽を眺めていると、面白い場面に遭遇しました。
水族館の水槽内でチンアナゴ同士が威嚇し合い、片方が口を大きく開けてもう片方を追い払おうとしていました。集まって暮らしている彼らにもある程度の縄張り意識があるのでしょう。
その後、なんと一匹のチンアナゴが巣穴から体を完全に抜け出し、水槽の中をゆらゆらと泳ぎはじめたのです。これまで何度も訪れた水族館で、何度も見てきたチンアナゴ・ニシキアナゴたちでしたが、なかなかの衝撃映像でした。もちろん泳ぐ姿も愛らしさ満載です。

泳ぎながら移動したチンアナゴは、すぐに別の場所にある砂の中へと再び潜り込んでいきました。この一連の行動を目撃したのは偶然でしたし、一瞬の出来事でしたが、深く印象に残っています。
彼らのそんな姿が見られたら、もしかしたら良いことがあるかもしれません。
水族館のアイドル「チンアナゴ・ニシキアナゴ」
チンアナゴやニシキアナゴは、その愛らしい見た目と行動が多くの人を魅了しています。
砂に潜り、潮の流れに揺れながらプランクトンを捕まえる姿は、水槽の中でも一際目を引きます。よく見ると模様にも個体差があったり、表情が豊かだったり、見ていて飽きない要素がたくさんあります。そしてなにより、目線の高さで展示されている事が多く、じっとしている彼らは観察しやすさもバツグンです。
ぜひじっくりと時間をかけて、チンアナゴ・ニシキアナゴの「エサを食べる姿」や「泳ぐ姿」、「喧嘩する様子」を観察してみてくださいね。
(サカナトライター:halハルカ)