今年の夏、皆さんは海や水族館に行かれただろうか?
行ったという方はきっと海辺の磯場や水族館の水槽の片隅でカニをご覧になったに違いない。カニと言えば、泡を吹く、ハサミを持っているといったイメージを持たれているが、今回はその中でも「横歩きをする」というイメージについて語ろう。
カニはなぜ横歩きするのか、どんな種類でも横歩きするのか。
この記事を読むことにより、皆さんのカニの歩き方についての理解が深まれば幸いである。
カニの横歩き、見たことがありますか?
みなさんはそもそも、カニが横向きに歩いているところを意識して観察したことがあるだろうか?
みなさんが日常見る確率が高いカニには、どんなものがいるのか。
山や林の近くの小さな小川にはサワガニがいるし、大きな河川の堤防やその近くにはアカテガニ、ベンケイガニがいるだろう。
また、海水浴場のそばにある磯場では、ヒライソガニやイワガニ、オウギガニといった種類の海のカニがみられる。
これらのカニはすべて“横歩きをするカニ”である。自然の中でこれらのカニに出くわしたら、その動き方に注意して観察してみると、実際に横歩きしているところがみられるだろう。
カニはなぜ横に歩くか
では、これらのカニはなぜ横に歩くのだろうか。その疑問を解くカギは、カニの体の構造にある。
上述のカニたちは共通して脚の節の幅が広く、例えば人間の肘の関節のように一方向にしか曲がらないという特徴がある。こんな特徴の脚が根元を接して4対も並んでいるうえ、大きなハサミがあるのでは、とても前に進むことはできない。
よって自然に足の動かせる横向きに歩くというわけである。
前に進むカニ、後ろに進むカニ
みなさんが普段目にしないようなカニには、実は横歩きしない種類もいるといえば、驚かれるだろうか。
例えばクモガニ類やコブシガニ類のカニたちは、前に歩くことができる。これらのカニは脚が細いためその付け根に余裕があり、甲羅が角ばっていないことも手伝って、自由に前に歩くことができる。
また、後ろにしか歩けないカニもいる。アサヒガニやカラッパ類がそうで、これらのカニはハサミ等が邪魔で横に歩けない。そのため一番抵抗が少ない後ろ向きに歩くというわけである。
また、水族館で人気の高いタカアシガニは、その脚の長さのおかげで、前後左右に自由に歩くことができる。
カニの歩き方はいろいろ
以上、カニの歩き方のメカニズムや種によって違う移動方向などを紹介した。
皆さんが普段よく目にするカニは横歩きだが、シュノーケリングや水族館ではいろいろな種類のカニを目にすることができる。脚の付き方や動き方をよく観察してみれば、歩き方について新しい発見があるかもしれない。
(サカナトライター:宇佐見ふみしげ)