燃えるように赤い魚・フレームエンゼルを知っていますか?
主にマリンアクアリウムで親しまれている魚です。飼育難易度は易しいとは言えませんが、一匹いるだけで水槽がぱっと鮮やかになるなどさまざまな魅力を持っています。
そんなフレームエンゼルの魅力や飼育方法について紹介します。
ヤッコの仲間<フレームエンゼル>
フレームエンゼルとは、キンチャクダイ科の仲間で、小型ヤッコに属する種類です。その中でも、クシピポプス亜属という種類に分類されます。クシピポプス亜属はやや深い岩礁域に生息する種が多く、サンゴはほとんど食べません。
彼らは雑食性で、主に動物性プランクトンや藻類などを食べています。吻先は下向きについており、顔つきはスラッとした印象です。クシピポプス亜属には、フレームエンゼルのほか、ルリヤッコ、アカハラヤッコ、チャイロヤッコなどがいます。
フレームエンゼルは中~西部太平洋に生息し、水深20メートル前後の岩礁、サンゴ礁域で見られます。
燃えるような赤色の体色に、黒い縞模様が入ります。この黒い縞模様は太さ、長さが個体によって様々です。
マリンアクアリウムで流通する個体はマーシャル産、バヌアツ産、クリスマス島産の個体が多いです。全長3~10センチほどの個体が一般的です。
フレームエンゼルの今昔
かつてはアクアリウムショップでポピュラー種として4000~8000円で購入ができ、少し飼育に自信がつけば誰でもチャレンジできるヤッコでした。
しかし、ここ数年で1万5000~2万5000円ほどに値上がってしまい、簡単に手に入らなくなってしまいました。

価格高騰の要因として、コロナ・為替・輸送コストなどの影響が大きいでしょう。また以前に比べ入荷量が減少し、希少性が高まったことも原因のひとつです。
結果、現在では『高級魚』という位置付けになっています。簡単には手に入らなくなりましたが、フレームエンゼル本来の魅力は未だ健在です。
マーシャル産フレームエンゼルを飼育
筆者は2014~2018年の期間に、マーシャル産フレームエンゼルを3匹ほど飼育したことがあります。
4000円ほどで購入し、ヤッコ、チョウチョウウオを大混泳をさせた150センチオーバーフロー水槽、90センチ外部濾過水槽だったり、フレームエンゼルを主役とした60センチ外部濾過水槽、60センチ上部濾過水槽の経験があります。
筆者自身は採集家でもあったので、購入した魚を飼育する機会は少なく、短い飼育経験ですが、実体験もとに紹介していきます。
フレームエンゼルの飼い方
ヤッコの仲間は中級者以上のアクアリスト向けと言われています。
海水魚飼育の基本的な知識(器具、餌、管理の仕方、魚の種類)を含め、器具の使い分けやトラブル対応など実体験を元にした飼育経験が最低限必要になってきます。
海水魚の飼育経験が数年ある中級者からすると、フレームエンゼルは小型ヤッコの仲間の中でも簡単と言えます。同亜属にルリヤッコやアカハラヤッコがいますが、これらも同じ飼育難易度といえます。
海水魚の基本的な管理の仕方、餌の選択、魚に向き合う気持ちがあれば簡単に年単位の飼育を狙えます。外せないポイントとしては水槽の広さ、餌、多種との混泳です。
確実に長期飼育を狙う場合、フレームエンゼルを主役とした60センチ以上の水槽を用意しましょう。濾過方式は一般的な器具で問題ありません。オーバーフロー、外部濾過、上部式濾過、底面式濾過を予算、好みにあったものを使用しましょう。
大前提として、餌付け、長期飼育を狙うにはまずフレームエンゼルを落ち着かせる水槽環境を整えましょう。広い水槽で濾過がしっかりしていることやライブロックなど隠れ家が多く、おとなしい混泳種がいる環境にしてあげます。
フレームエンゼルは餌付けしやすいヤッコ
フレームエンゼルは、アクアリウムショップで餌付けされている個体がほとんどです。
個体の調子が良ければ、3日以内にはペレットタイプの人工飼料を食べ始めます。人工飼料を食べない場合、落ち着かせる環境を見直した後、冷凍ブラインシュリンプ、冷凍ホワイトシュリンプや生のオキアミを叩いたものを与えます。

食べない場合は孵化させたブラインシュリンプから繋ぐ方法もあります。諦めずにブラインシュリンプから様々な餌を与え、最終的に人工飼料に餌付けることが可能な魚です。
日常の管理ですが、餌は1日3回与えます。1日1回だと少なく、体調を崩しやすいです。餌をしっかり与えるのが長期飼育の秘訣です。
ライトや水換えのポイント 温度変化がないように
ライトが必要のない飼育環境なら、昼間8時間、点灯させ、夜は暗い環境をしっかり作ってあげましょう。
ただ筆者の飼育経験ではライトは8時間つけず、好きな時に点灯させても長生きにはさほど影響がありませんでした。ライトの点灯時間も色々試してみましょう。
水換えは2週間に1度、水槽の1/3程度で問題ありません。飼育温度は重要な項目で22~28度付近をキープしてください。特に春と秋は温度変化が大きく、体調を崩しやすいので、春はエアコンか水槽クーラー、秋はヒーターを早めに設置し温度変化がないようにしましょう。
フレームエンゼルは最初は鮮やかな赤ですが、長く飼育していると橙色に変化してきます。これは一般的に、照明、水質、餌によるものだと言われていますが、原因ははっきりとしていません。
フレームエンゼルは1匹だけで彩りを添える存在
真っ赤で存在感のあるフレームエンゼルほど水槽のメインになれる魚は他にいません。不思議なことに理屈ではなく、フレームエンゼルは水槽に1匹いるだけで完結する……オンリーワンな存在なのです。
ヤッコは色んな種を混泳させるのが一般的ですが、単独で飼育して特別感を味わうのも楽しいです。
個人的にはレモンピールエンゼルフィッシュとコンビで飼育することが好きです。赤と黄色が見事に対比してとても映える組み合わせです。

フレームエンゼルは色や縞模様が個体によって違いがあり、全く同じ個体は存在しません。ショップで入荷したら唯一無二の個体を見つけてみてください。
現在では金額的に以前ほど簡単に入手できなくなりましたが、定期的にショップには入荷するので勇気を持って飼育に挑戦してみてください。
(サカナトライター:たつ)
参考文献
『海の魚とサンゴの情報誌マリンアクアリストno.103 2022 SUMMER、エムピージェー、P24
円藤清(2011)、小型ヤッコが飼いたい!ケントロピーゲの図鑑と飼育、エムピージェー、P20-21
富沢直人(2008)、ヤッコ&チョウチョウウオの世界、ピーシーズ、P78-79