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魚は人が思っている以上に賢い

これらの研究結果を踏まえて改めて筆者が考えたのは、現代においても無意識に「魚は賢くない」という思い込みが蔓延しているのではないか、ということです。

賛否があるのは承知の上で、筆者はかつて勤めていた水族館で魚それぞれに「名前」をつけて飼育していました。また展示している魚を「種」としてではなく、「個体」として認識してほしいと思い、その個体の特徴を記載したパネル作成や解説に努めていました。

水族館等の施設において、海獣類の個体のほとんどに名前がつけられ、その動物に不幸があればみんなで悲しみます。

しかし、魚には不幸があっても、日々の作業で死んだ魚を数えてデータにつけて終わりです。検死をすることもありますが、それ以上のことはありません。大水槽のイワシが1尾落ちたくらいで、悲しんでくれる人はいません。

フィールドワークやダイビングをすればするほど、同じ種類の魚であっても、それぞれが別の個体だという認識が強くなります。この魚達は1尾1尾にちゃんと個性があり、認識能力があるのだと強く感じる場面は多いです。

それが水族館や自宅で飼育している魚であればなおさら、自然から連れてきた子たちをただ「種」として消費するのは勿体ないと私は考えます。

筆者としては、例え魚が賢かろうとそうでなかろうと等しく大事にしたいと思っていますし、魚に対する態度を変えるわけではありません。しかし、魚の高度な認識能力が解明されつつある今、魚への向き合い方は少しずつ変わっていくのではないかと思います。

(サカナトライター:みのり)

参考文献

岡山大学:メダカは「顔」で仲間を見分ける ~メダカの「顔」を見分ける仕組みは特化している?~

『魚にも自分がわかるー動物認知研究の最先端』(著:幸田正典/ちくま新書)

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みのり

みのり

センス・オブ・ワンダーを大切に

水族館に関するお話やフィールドワーク体験の記事を中心に、自然環境の素晴らしさやそれらを取り巻く文化的なお話もお伝えしていきます。

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