逃がしてはいけない
ひとくちに「ドンコ」といっても、いくつかのグループにわかれています。
Sakai, Yamamoto and Iwata(1998)によれば、日本産のドンコは西九州グループ、西瀬戸グループ、東瀬戸グループ、山陰・琵琶・伊勢グループ、そして匹見グループの5つのグループに分けられています。
このうち山口県と島根県に生息し、匹見グループと呼ばれていたグループについては2002年に新種として記載され、イシドンコ Odontobutis hikimius Iwata and Sakai,2002 という標準和名がつけられました。

ほかの地域のドンコについても、いつかは種、ないし亜種として記載されるかもしれません。細かい遺伝的集団のすみわけが狂ってしまうこともあり、採集したドンコを飼育できなくなったとしても、河川に逃がしてはいけません。
また、飼育していたドンコを採集したのと同じ場所に逃がすのも、寄生虫やほかの魚の病気が伝染している可能性があり、慎みましょう。採集して写真だけ撮影し逃がすというのは許容されると思います。
ドンコに限らず飼育していた魚の放流というのはさまざまな問題があり、慎まなければならないのです。
(サカナトライター:椎名まさと)
参考文献
榮川省造(1982)、新釈 魚名考、青銅企画出版、607pp.
藤岡康弘・川瀬成吾・田畑諒一 編(2024)、琵琶湖の魚類図鑑、サンライズ出版
中坊徹次編(2013)、日本産魚類検索 全種の同定 第三版、東海大学出版会
日本魚類学会編(1981)、日本産魚名大辞典、三省堂
Sakai. H, C. Yamamoto and A. Iwata. 1998. Genetic divergence, variation and zoogeography of a freshwater goby, Odontobutis obscura. Ichthyol. Res., 45 (4): 363-376.