各地から282点のウナギを収集
この研究では、世界的なウナギ属の消費構造を解明すべく2023年~2025年にかけて東アジアはもちろんのこと、欧米、北米、オセアニア、東南アジアの計11カ国・地域26都市からウナギと、その加工品が282点が収集されました。
収集されたサンプルには、生鮮品に加え、蒲焼きや総菜、飲食店の料理が含まれており、これらについてDNAバーコーディングを用いた種同定が行われています。
さらに、FAO(国連食糧農業機関)と日中韓台で構成されるウナギ資源管理組織「非公式協議」の生産統計と国連貿易統計の輸出入データを用いて、2020年~2022年における各国の国内ウナギ流通量を推定。世界規模の消費構造が算出されました。
ウナギ属魚類を4種確認
DNAバーコーディングによる同定の結果、解析ができた279点からアメリカウナギ、ニホンウナギ、ヨーロッパウナギ、インドネシアショートフィンウナギの4種が確認されており、それぞれ順に54.1%、44.1%、1.4%、0.4%となっています。

さらに、FAOに基づいた全世界の年間平均供給量が約28.6万トンであったのに対し、「非公式協議」では約12.1万トンと大きな差があり、統計の不透明さが明らかになりました。その主な要因は、中国の養殖生産量の報告値の差にあることがわかっているようです。
流通量上位3カ国については、FAOデータで中国、日本、韓国の順であり、「非公式協議」のデータでは日本、韓国、アメリカの順。一人当たりの供給量は、データソースにかかわらず東アジアが上位を占めており、日本が世界で一位、次いで香港、韓国、マカオ、オランダの順となっています。
消費の中心は絶滅危惧種3種に
種構成を供給量で補正した世界消費量推定では、FAO統計でアメリカウナギ75.3%、ニホンウナギ18.0%、ヨーロッパウナギ6.7%、インドネシアショートフィンウナギ0.02%、「非公式協議」統計でアメリカウナギ52.7%、ニホンウナギ43.5%、ヨーロッパウナギ3.6%、インドネシアショートフィンウナギ0.2%という結果に。
これにより、消費の99%以上がIUCNの評価で絶滅危惧種に分類されているアメリカウナギ、ニホンウナギ、ヨーロッパウナギの3種に集中していることが明らかになったのです。
この結果は、ウナギの消費の中心である東アジアの文化的嗜好と購買力が背景にあると考えられています。
統計の精度向上が急務とされる
今回の研究でウナギの消費の中心が東アジアにあり、1人あたりのウナギ供給量は日本が世界で一位であることが判明しています。
また、世界中で流通しているウナギの種が特定された結果、世界で消費されているウナギ属の99%が絶滅危惧種3種に集中であること、最も消費されているウナギ属がアメリカウナギであることも明らかになりました。
今後、今回の調査では対象にならなかった地域やウナギ属についての消費動向の把握、ウナギ属全体の生産・貿易に関する統計の精度向上が非常に重要とされています。
(サカナト編集部)
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