2025年1月、岐阜県博物館が主催した調査研究報告会で、古生物学における重要な発見が発表されました。
それが岐阜県の神岡地域の地層から発見されたワニ形類の歯化石。この化石は前期白亜紀オーテリビアン期(約1億2700万年前)の地層から発見されたものであり、日本の古生物研究における大きな発見となりました。
岐阜県飛騨市はこの成果の記念し、9月13日に『神岡化石フォーラム2025』を開催すると発表。このイベントでは実際に発掘に携わった古生物学者を招き講演会を行うほか、化石掘り出し体験が行えるプログラムが実施されます。
骨化石を多く含んだ「ボーンベッド」
地球の歴史が刻みこまれた「地層」。中でも骨化石を多数含んだ地層はボーンベッドと呼ばれています。
岐阜県における白亜紀ボーンベッドは、これまで高山市と白川村からのみ知られていました。

そうした中、2020年より岐阜県博物館、福井県立恐竜博物館、福井県立大学恐竜学研究所が共同で調査を開始。神岡町に広がる手取層群の地層から多数の脊椎動物骨化石を含む白亜紀ボーンベッドを発見しました。
多数の脊椎動物骨化石を発見
これまで、神岡地域からは恐竜類の足跡化石や植物化石は見つかっていたものの、脊椎動物骨化石の発見には至っていなかったといいます。
そのため、この成果は岐阜県飛騨市内における初の白亜紀脊椎動物化石の発見となったのです。加えて、白亜紀脊椎動物化石の産地は国内でも限られていることから、この地層はを集めました。
また、この地域では年代測定が可能なサンプルが得られることから、動物相の変遷など地球の歴史を紐解く貴重なキーになることが期待されています。
ワニ形類の歯化石
飛騨神岡の地層からは、これまで多数の骨化石が見つかっており、その数なんと約200点。主な内訳は魚類が60点、カメ類が40点となっています。

さらに、驚くべきことに地層から発掘された化石の中にはワニ形類の歯化石も含まれていました。その大きさわずか1センチ程です。このことは2025年1月に岐阜県博物館が主催した調査研究報告会にて発表され、日本の古生物研究における重要な発見とされました。
最古のワニ形類化石記録
凝灰岩層のジルコン粒子を用いたウラン‐鉛年代測定により、この地層の形成時期が前期白亜紀オーテリビアン期であることが明らかに。これを年数で表すと、約1億2700年万前に形成された地層ということになります。
これはこれまで最古とされてきた約1億1500万年前(福井県勝山市で発見)を上回る古さであり、手取層群で最古のワニ形類化石の記録として日本の古生物研究に新たな基準をもたらす発見となりました。
また、比較的暖かい地域に分布するワニ形類が、神岡地域のような寒冷な環境に進出していたことが示唆されました。東アジアにおいてワニ形類化石の発見が乏しい時代であることから、神岡地域の標本はワニ形類の理解を深める上で重要な発見とされています。
貴重な化石を見れるチャンス
9月13日に開催される『神岡化石フォーラム2025』では発掘に携わった研究者による講演が行われるほか、ワニ形類の化石展示、化石の掘り出し体験が行えるプログラムが実施される予定です。
ワニ形類化石を見ることができる貴重な機会に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
イベントの詳細は飛騨誌公式WEBサイトで確認することができます。
※2025年9月12日時点の情報です
(サカナト編集部)