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SNSでも話題になった『日本産ウミヘビ科魚類図譜』 イラスト担当のざんくるすさんにインタビューしてみた

多種多様な魚を精密なイラストで表現するイラストレーター・ざんくるすさん

文献を丁寧に調べ上げ、繊細な体色やヒレの場所や大きさ、細かな鱗、プロポーションまで魚の特徴を細部まで捉えたイラストをSNSで発信しています。

今年7月、ざんくるすさんが初めて制作した図譜『日本産ウミヘビ科魚類図譜』を発表すると、その内容や質の高さに多くの反響がありました。

この図譜ではウミヘビ科魚類の著名な研究者である日比野友亮さんが文と監修を担当。美しいイラストともに日本産ウミヘビ科が「これでもか!」というくらい、詳しく紹介されています。

ざんくるすさんへのインタビューを通して、クオリティの高いイラストを仕上げる制作の裏側を覗いてみました。

幼少期から魚図鑑を自作

━━普段はどのような活動をされていますか?

主に魚のイラストをSNSで発信する活動をしています。たまにイベントに出展して、描いたイラストを使ったクリアファイルなどのグッズ販売もしています。

図譜については、今回の『日本産ウミヘビ科魚類図譜』が初めての作品です。

━━魚図鑑でツノダシを見たことをきっかけに魚が好きになったそうですね。魚のどんな部分に惹かれたのでしょうか?

強いて言えば色や形ですかね……。

ただ、幼少のころに最初に触れたのが魚図鑑だったので、刷り込みのようなものだったかもしれません。

━━イラストを描き始めた頃はどのようなツールで描いていたのでしょうか。デジタルイラストに移行した時期やきっかけを伺いたいです。

最初は色鉛筆に画用紙で描いていました。子どものころは自分オリジナルの魚図鑑を作ったりもしたんですよ。

当時の図鑑が手元に残っています。実際の図鑑のように、ヌタウナギから順に描いて載せていきました。

子供のころに作成したオリジナル図鑑(提供:ざんくるす)

デジタルイラストツールである「ibisPaint」を使い始めたのは2019年末頃です。魚を描くためではなく、単純にデジタルイラストというものに興味が湧いて使い始めました。ibisPaintは基本無料で使えるので、手が出しやすかったというのもあります。

デジタルイラストを始めたときから指を使って描いていますが、いつかはタッチペンのようなツールも使ってみたいです!

描きたい魚を思うように

━━様々な分類群の魚を描いていますが、どのようにして描く魚を選定していますか?

以前は魚図鑑に載っているような順番で、分類群ごとに代表的な魚をピックアップして描いていました。はじめはサメやエイ、そのあと古代魚やウナギへ──といった感じです。

今はそのようなことを気にせず、描きたいと思った魚を描くようにしています。

あとは、新種記載されたばかりの魚を描くこともあります。2024年に新種記載されたオオシロブチギンザメを描いたときは記載者から反応をいただきました。

━━研究者の方から直接反応を頂けるのはSNSの良いところでもありますね。ざんくるすさんはイラストの更新頻度が高いと感じるのですが、普段どのようなタイミングに制作を行っているのでしょうか?

いつも暇なときに描いています(笑)

描いているとだんだんイラストの細かい部分が気になってくるので、その都度修正や追加をしつつ……という感じで続けています。特にニョロニョロ系の魚──ウナギ目なんかは、鱗や鰭条(きじょう:鰭を支える筋のような構造)の表現を省略できる場合も多いので、普通の魚と比較して描くのが楽なんです。

なのでこういった魚を描いていた時期は、1日に1枚をアップしたこともありました。

━━魚によって力を入れるポイントも変わってくるんですね。描いていて特に難しい部分や、楽しい瞬間はありますか?

魚を描くときは必ず論文や書籍を見て参考にしているのですが、資料が少なかったり、資料の入手が難しかったりすると、それを探すのに時間や労力がかかります。

資料が少ないと、その魚を描くのに必要な情報(計測値や計数値など)が足りないこともあるので、それを補うのが大変です。絵が出来上がっていくにつれて、輪郭や塗った色がだんだんその魚のイメージに近づいているなと感じたときはとても楽しいですね。

また、描く対象の魚をよく観察しているとき、今まで見えていなかった部分に気付くとテンションが上がります。「これを表現しよう!」とイラストへのモチベーションも自然と高まりますね。

━━おっしゃる通り、海外の論文など、入手が難しいものもありますよね。そういったものはどのように資料を用意しているのでしょうか。

通っている大学が論文を購読しているのと、図書館にある論文の現物を活用しています。それでも見つからない場合は論文を買うこともありますね。最近は円安なので、論文も少し高めです。

直近でいうと、ユウレイオニアンコウの寄生したオスが描きたくて、5000円くらいの論文を購入しました。「ユウレイオニアンコウのオスの寄生組織学」みたいな論文なんですけど、寄生オスとメスの付着部の詳しい情報が載っており、イラストを描くのにとても役立ちました。

ユウレイオニアンコウのイラスト(提供:ざんくるす)

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サカナト編集部

サカナト編集部

サカナに特化したメディア

サカナに特化したメディア『サカナト』。本とWebで同時創刊。魚をはじめとした水生生物の多様な魅力を発信していきます。

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