史上最大のサメとして知られるメガロドン。
今から約2300万年前から360万年前にかけて地球に存在したと言われる、古代の生きものです。その大きさは圧倒的で、近年はサメ映画に登場することもあります。
もし現代のサメが、さらに大きな姿で海を泳いでいたら──。多くの人が、“生態系の頂点”として恐れられていたに違いないと想像します。しかし、実際の太古の海ではそう単純ではありませんでした。
彼らがいた海は、強大なライバルだらけだったのです。
メガロドンはなぜ巨大化したのか?
メガロドンは約2300万年前~360万年前にかけて生息し、クジラやアザラシ、大型の魚を捕食する海の王者でした。
その見た目からホホジロザメの祖先を思わせますが、近年の研究により絶滅種であることが分かるなど、続々と新たな知見が明らかになっています。
例えば、大きさ。メガロドンといえば、人間がすっぽり入ってしまう巨大なあごを思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし体全体の大きさは手がかりが少なく、「全長10~24メートル前後の間」とされており、今でも頻繁に新説が出されています。
メガロドンのアゴの化石レプリカ(提供:平塚市博物館)ホホジロザメは最大で6~7メートル前後のため、それよりはるかに大きかったのは間違いないでしょう。ホホジロザメでも十分に巨大で強力なのに、なぜそれ以上に巨大になる必要があったのでしょうか?
そして、もうひとつ謎があります。
メガロドンの子どもは、現在の一部のサメでもみられるように、安全な浅瀬で過ごしていたようです。しかし、メガロドンは生まれた時点で、既に全長が2~3.6メートルあったとされています。
それだけの大きさがあったとしても、浅瀬の外には敵がいたのでしょうか。
実は、当時の海は“怪物のような捕食者”がひしめいていました。つまり、メガロドンは競争に打ち勝つために巨大化しなければならなかったと考えられるのです。
では、メガロドンのライバルと目される生き物たちを紹介していきましょう。
古代のマッコウクジラ
メガロドンと生態系の頂点を競っていたのが、「強肉食性のマッコウクジラ類」とよばれるグループ。現在のマッコウクジラと違って上あごにも牙があり、ほかのクジラやサメなどの大型動物を捕食していました。
なかでもリヴィアタンは、全長が約14~18メートル。成長したメガロドンと1対1で勝負できる唯一のライバルだったでしょう。メガロドンと同時代・同地域から化石が発見されており、競争相手だったと考えられます。
現代のマッコウクジラ(提供:PhotoAC)強肉食性のマッコウクジラはリヴィアタンだけではありません。長野県で化石が見つかったブリグモフィセター(カミツキマッコウ)は、全長約6メートル。平均的なシャチとほぼ同レベルの大きさです。
ほかにも、アルビケトゥス(全長約6メートル)、アクロフィセター(全長約4.5メートル)、ジゴフィセター(全長約7メートル)といった強肉食性のマッコウクジラ類がいました。
彼らは、大きさでは大人のメガロドンには及びませんが、成長途中のメガロドンにとっては脅威だったはずです。
メガロドンは広範な獲物を捕食していた?
また、以前はメガロドンは大型のクジラ、他の捕食者はそれより小さな動物を獲物として競争を避けていたと考えられていましたが、近年ではメガロドンは広範な獲物を捕食していたことがわかってきました。となると彼らは、獲物をめぐるライバル関係にあったはずです。
しかしメガロドンも強肉食性のマッコウクジラ類も、現在の地球に子孫は生き残っていません。つまり彼らの勝負は、両者共倒れの引き分けということになるでしょう。
シャチの祖先
シャチの仲間は、メガロドンが絶滅した直後の約350万年前に現れます。その少し前に、イルカからシャチへの移行種かもしれない動物がいました。
現代のシャチ(提供:PhotoAC)ヘミシントラケラスは、イルカとシャチの中間的な特徴をもつグループ。メガロドンと同時代・同地域から、全長5メートル前後の種が見つかっています。
彼らがもしシャチの祖先だとすると、メガロドンとの競争を制して海の王者の座を奪い取ったことになります。
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