“サメの卵”と聞くと、どのようなものが思い浮かびますか?
「あの高級なキャビアでしょう」という声が聞こえてきそうですが、キャビアはチョウザメの卵。実のところ、チョウザメはサメとは全く異なる魚なので、サメの卵とは言えません。
では、本当のサメの卵とは? 海にすむサメたちの不思議な卵についてまとめました。
サメの卵ってどんな形?
サメは卵生と胎生に分かれます。そして、卵生のものは種によって、それぞれ個性的かつ形の異なる卵を産みます。
アーモンド型や巾着型をしていたり、フワフワした毛のようなものが付いていたり、紐状の物が付いていたり、中にはドリル状になっているものもあります。

形は様々ですが、大まかに共通するのは出口が決まっている「袋状」になっていることです。
袋の中には、一般的な卵のようにひとつの卵黄があり、その栄養を摂取して胚が幼魚に成長。期間は種類によって様々ですが、3ヶ月から長い種になると1年近くをかけて成長していきます。
卵の形の多様性は<流されないための工夫>の結果?
海中には流れがあります。親サメが生息している環境から違う環境に流されてしまうと、水温が違いで孵化できないまま死んでしまったり、孵化しても餌がなく死んでしまったりします。
そこで、別の水域に流されないよう、サメの卵にはそれぞれの生息環境に合わせた“流れていかない工夫”がされており、その結果として形が様々になるのです。
紐やフワフワした毛がある卵からドリル状の卵まで
例えば、トラザメなど紐のある卵は、親サメが海藻や岩の突起などに紐を巻き付けて固定します。加えて、色や形も海藻に似ているので、カモフラージュの要素もあります。

一方、フワフワした毛のようなものがある卵。この毛は「付着糸」と呼ばれ、岩や砂に絡み付く形状になっています。
イヌザメ、トラフザメなどの卵がこの形状で、母サメが産み落として着底すると、そこに固定されます。

ドリル状の卵は岩の隙間や窪みに入り込み、ネジの様に固定されます。ネコザメの卵はこのような形をしています。

サメの卵を観察してみよう
世界で知られているサメは約500種。その内の約40%が卵生で、残り約60%が胎生です。
陸に近く、底に生息している種は卵生であることが多いです。陸近くに生息しているため、孵化した後の卵の殻が海岸に打ち上げられて海藻と見間違われることも。乾燥するとクシャクシャになってしまうので、見つけた時はぜひ観察してみてください。
また、朝早い時間の水族館ではサメの水槽に産みたての卵が落ちていたり、珍しいサメが卵を産むと展示したりと、水族館で観察できる機会もあります。そのような時も、ぜひサメの卵からどのような環境で暮らしているかを想像してみてください。
併せて水槽のサメたちを観察すれば、より楽しく、学びのある鑑賞体験となるでしょう。
(サカナトライター:Sugi)