自分の出身地や現在住んでいる都道府県に、「県鳥」や「県花」、そして「県魚」といった「県◯」が制定されていることを知っていますか? 「県◯」とは、各都道府県を代表するシンボルとして定められたものです。
中でも「県魚」は、各地域の漁業の歴史や食文化などに対する思いが詰まっており、さまざまな魚介類が選ばれています。
47都道府県すべてが制定しているわけではありませんが、制定されている魚種には、驚くほど地域色豊かな背景があるのが特徴です。
県魚とはどのようにして選ばれるのか、そしてどのような魚が県魚として選ばれているのでしょうか。
そもそも「県魚」とは? 選ばれるのはどんな魚?
県魚とは、各都道府県で郷土を代表するものとして選び定められた魚介のことです。
地域を代表する、漁獲量が多い、伝統漁業に深く関わる──など、その都道府県に重要な魚介であることが条件です。
山形県の県魚<サクラマス>(提供:PhotoAC)海が近い地域では海の魚介が、“海なし県”と呼ばれることもある内陸の県では淡水魚が選ばれる傾向にあります。
なお「県魚」と聞くと、魚だけが対象と想像するかもしれません。しかし、実際にはエビ・カニなどの甲殻類やイカ、海藻なども含まれます。
海の魚から川の魚まで! 地域色豊かな県魚
2025年12月時点で、県魚を定めている自治体は全国で26県です。それぞれの県が、自分たちの暮らしや文化を象徴する魚介類を選び、地域性をアピールしています。
埼玉県の県魚<ムサシトミヨ>(提供:PhotoAC)地域を代表する魚を県魚にしている事例や複数の魚を選定する事例、そして県魚がない事例など様々あります。
地域を代表する魚介類を選定する県
各地で象徴的な存在として扱われている魚介類が県魚とされている事例があります。
例えば、秋田県の県魚は、冬の味覚として親しまれているハタハタ。広島県では、特産品として知られるカキ、高知県では「藁焼きタタキ」で有名なカツオが選定されています。
また、青森県は全国トップの漁獲量を誇るヒラメを選び、福井県はズワイガニの中でも最高級品種と言われる「越前ガニ」が県のシンボルとして県魚になっています。
群馬県と岐阜県で県魚に指定される<アユ>(提供:PhotoAC)川の魚では、アユが群馬県、岐阜県で県魚として選ばれています。
なかでも岐阜県のアユは「清流 長良川」のシンボルで、アユ漁の1つである鵜飼と深く結びついてきました。アユは、岐阜県の地域文化を語るうえで欠かせない魚といえるでしょう。
上記の魚介類は、県の名前を聞いただけで自然と思い浮かべるのではないでしょうか。
「複数の魚を選定する県」と「県魚なしの地域」
複数の魚介類を県魚としている地域もあります。
富山県ではブリ・シロエビ・ホタルイカを、奈良県ではアユ・キンギョ・アマゴを取り入れています。
また、長崎県では、季節ごとに異なる魚介類を選抜しており、計12種類を指定。最も多くの種類を選んだ鳥取県では、計20種類を県魚として打ち出しています。
複数魚を指定する長崎県の県魚のひとつ<トビウオ>(提供:PhotoAC)一方で、多種多様な魚介類が獲れることにより、あえて県魚を制定しない県もあります。
たとえば、石川県では県魚と呼ばずに「石川の四季のさかな」として、季節ごとの魚を選定。また兵庫県では、全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)の選定した「プライドフィッシュ(漁師自慢の魚)」を紹介し、県内で水揚げされる魚介類の魅力を発信しています。
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