8~9月は「季節来遊魚の季節到来」
夏本番となり、季節来遊魚が増えてきて、海の中が賑やかになってきます。一般の方は海水浴で海に行きますが、採集家は人が少ない磯に足を運びます。
季節来遊魚の中で代表的なスズメダイ、チョウチョウウオ、ニザダイ、ヤッコをメインに採集し、自宅で飼育していきます。
8~9月に多くみられるツノダシ(提供:たつ)毎年海に足を運んでいると、前の年に見つけた魚が見つけられなくなることもあり、海は常に変化し続けるものだと実感します。
この頃に観られる魚たちは、まだ飼育するには小さい個体が多く、採集するか判断に困ることが多いです。
採集してきた魚は、4月から温めてきたメイン水槽に入れるほか、餌付け用の水槽を急遽立ち上げる必要が生じることもあるため、水槽は最低でも3個あるといいです。
また、8月の時点でたくさんの魚を入れてしまうと管理が大変になるので、持ち帰る魚はほどほどにしましょう。
台風が重なると海にいけない……そんなときは流れ藻採集
困ったことに台風が重なると海に行けないこともあります。
台風が多いと流れ藻採集もできますが、潜りで採集した魚と流れ藻採集で捕まえた魚を飼育するのは両立が大変です。
流れ藻採集の代表種はこの時期はカンパチ、モンガラカワハギの仲間、ナンヨウツバメウオなど多種多様です。
毎週のように潜ることもいいですが、たまには網だけを持って岸壁採集に行ったり、キンギョハナダイやハナハゼを釣ったりなど緩く活動し、体力を残しておくのもシーズンを長く活動を続けるコツです。
10~12月も「まだまだ季節来遊魚」
10月もまだまだ海に潜れます。この頃になると8~9月に黒潮によって流れてきた魚たちはある程度大きくなり、採集しにくくなってきます。一方、この時期にはレアな魚を見つけることが多いです。
個人的にはこの10月頃がシーズンのピークで、最も頑張る時期。寒くても、行楽に忙しくても、レアな魚のためほとんど毎週海へ足を運びます。新しいポイントに行くというよりも、行き慣れたホームのフィールドを繰り返し訪れることが多いです。
フィールドでは、ヤッコやチョウチョウウオの仲間が8~9月より大きくなり、餌付け・飼育がしやすいサイズの個体を比較的多く見つけることができます。
10月から本格的にみられるヤッコの仲間(提供:たつ)11月以降に海に潜る場合、ウエットスーツは5ミリ以上の冬用かつフードが必需品になってきます。近所のフィールドに行くときはお湯をポリタンクに入れて寒さ対策を忘れないようにします。
冬本番はダンゴウオの採集に切り替え
12月になると水温も冬らしくなり、潜るのは難しくなってきます。このタイミングで“潜り納め”をして、ダンゴウオの採集にシフトします。
ダンゴウオは夜間の磯で採集しますが、一緒に季節来遊魚も採集できます。スズメダイ、ニザダイ、ヤッコ、ミノカサゴの仲間を毎年見かけます。しかし、その年の寒波が来た後は、季節来遊魚の姿を磯で見ることはできなくなります。
一方、8月に採集した魚は餌付けが完了し、環境に慣れてくる頃です。シーズンで様々な魚を導入し、その年の自分だけの水槽が完成します。そんな自分だけの水槽を来年まで維持するため、休日は採集だけでなく、水槽のメンテナンスや管理もサボらずに行います。
年によっては水槽の調子が悪く、なかなか長生きしないこともありますが、その経験を踏まえて来年うまく水槽が機能できるよう水質検査や温度、餌などを記録しておきます。
1~3月はオフシーズン「飼育と深海魚拾い」
冬季に当たる概ね1月〜3月の期間は、自分の水槽の維持管理をしつつ、ショップや水族館に足を運んでモチベーションを維持する毎日です。シーズンが終わってしまい、モチベーションが下がる時期でもあります。
シーズン中は簡単に魚を採集できるので水槽が空になることは少ないですが、この時期は季節来遊魚もいない、寒くても外に出れないなどがあるので、魚の入手が極端に難しくなります。この時期は飼育している魚をしっかりと長生きさせるよう、水槽の管理を怠らず毎日を過ごします。
また、前年の採集の成果や他の採集家の方の情報などを見て、新年度の目標を立てたり、新しいポイントを見つけたりするための情報収集を行います。
冬のフィールドもなかなか面白い
飼育できる魚はいなくとも、冬のフィールドも面白いものです。
漁港の岸壁採集では、ときどき滅多にみられないような魚が見つかります。
真冬の岩壁で採集したニシキフウライウオ(提供:たつ)冬の小さな楽しみといえば、海岸に打ちあがっている深海魚。夜や早朝に海岸を散歩すると、深海魚が見つけられることがあるのです。
深海魚には1日のうち日没と日出で分布する深度を変える習性を持つものがいます。これを日周鉛直移動といいます。
冷たい海で生きている深海魚たち。水温が下がるこの時期には、浅瀬まであがってきてしまうようです。
ミズウオやハダカイワシ、ハダカエソの仲間が打ち上がっているのを観察することができます。