センネンダイは、アフリカやニューカレドニア、オーストラリア、南日本やハワイ諸島……と、熱帯域に広く分布している魚です。日本では本州・四国南岸や九州、南西諸島などでまれに見られます。
この魚は、幼生と成体で模様が異なることが大きな特徴です。魚の世界では、生存戦略として子どもと大人の色味が変わることがあるのです。
センネンダイの生態
センネンダイ(学名:Lutjanus sebae)はスズキ目フエダイ科の大型魚。まれに1mほどにもなる魚です。
タイとつきますが、タイの仲間ではありません。その体色がタイに似ていることからついた名前でしょう。
成熟しつつあるセンネンダイ(提供:PhotoAC)センネンダイはアフリカやニューカレドニア、オーストラリア、兵庫県以西の日本海、和歌山県以西や以南の西太平洋、ハワイ諸島など、熱帯海域に広く分布しています。体高が高く側扁する姿をしていて、小魚や甲殻類を食べる肉食魚です。
幼魚は浅瀬に生息しますが、成長するとサンゴ礁やその沖合の深海へ移動します。そのため日本近海ではあまり取れず、沖縄県や鹿児島県で数年に一度くらいの水揚げがあるそう。
千年に一度しか捕れないほど貴重とされ、漢字では「千年鯛」と書きます。
センネンダイが体色を変化させる理由
幼魚から若魚では、白っぽい色に体側に3本の太い赤帯模様があり、漢字の「小」や「川」のように見えるのが最大の特徴です。
センネンダイの幼魚(撮影:額田善之/撮影場所:足摺海洋館)なぜ、このような模様なのかは明確ではありませんが、他の熱帯魚と同様に捕食者から逃れるための擬態だと考えられます。
数cm程度の幼魚はマングローブに生息するガンガゼ(ウニの一種、トゲが長いのが特徴)のトゲとトゲの隙間に隠れるといい、その姿はダイバーによる目撃例もあるそう。
ガンガゼの黒い色や、落ち葉が堆積するマングローブの根っこに擬態し隠れるには、このような模様がぴったりなのでしょう。
成魚は深海環境への適応で体色を変化?
成魚になるとこの赤い帯は非常に薄くなり、マダイのような桜色や淡い赤色の体色になります。これは深海環境への適応だと考えられます。
魚の世界では、生き残るために体色を環境に応じて変化させる種は多くみられます。
大きくなるにつれ、生息域を変え、それに合わせ体色も変化させる──まさに、理にかなった変身といえますね。
センネンダイはとても美味しい魚
天然のセンネンダイ(釣りや定置網などで取れるもの)は、豊富な旨みと滑らかな食感でとても美味しいと言われます。市場では1キロあたり数千円以上の高値で取引されますが、入荷自体が少ないため入手困難です。
刺身だけでなく、皮目のゼラチン質を味わえる皮霜造りや焼き魚、またフライや煮付けなどでも美味しく食べられます。アラからは良いダシが出るため、汁物に最適で、余すところなく美味しい魚です。
刺身のイメージ(提供:PhotoAC)やっと入手可能となったセンネンダイ
最近、愛媛県や鹿児島県でセンネンダイの養殖が始まりました。
養殖で育てたセンネンダイは上質な脂がのっているうえ、天然ものと同じく他の魚よりもうま味成分や甘み成分が濃いのが特徴とのこと。確かに、マダイやマグロ、ブリなども養殖のものは脂がのりとても美味しいですよね。
そして、鹿児島県垂水市では2025年からふるさと納税の返礼品として入手が可能となりました。魚好きのグルメには朗報です。
海上釣り堀のイメージ(提供:PhotoAC)なお、和歌山県にある海上釣り堀「釣堀紀州」では、センネンダイが期間限定で放流されることもあるといいます。自分で釣り上げた幻の魚は、きっと最高の食材になるでしょう!
筆者もいつかは食べてみたい魚のひとつです。
(サカナトライター:額田善之)
参考資料
魚食普及推進センター-千年に一度しか取れない?激レア千年鯛(センネンダイ)が食卓に!https://osakana.suisankai.or.jp/s-other/11659