ギギが引き起こす外来生物問題
ギギは日本の在来種(もともと日本に生息していた種)であり、それと同時に日本の固有種(その地域にのみ生息する種)でもあります。しかしながら、日本国内において、ギギが「外来生物問題」を引き起こしている地域もあるのです。
「日本固有種なのに外来生物?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、日本国内であっても、その生物がいない場所に放流されたら、それは外来生物となってしまうのです。
国外外来生物の例、ブルーギル(米国から日本)(提供:椎名まさと)放流された生物のもともとの分布域が国外であれば国外外来生物、国内の別の地域からであれば国内外来生物ということになります。
国内外来生物の例、カワムツ(西日本から関東)(提供:椎名まさと)ギギが外来生物問題を起こしている地域としては、九州の筑後川水系の例が有名です。
筑後川水系においては、同じギギ科ギバチ属のアリアケギバチTachysurus aurantiacus(Temminck and Schlegel, 1846)という魚が生息しています。
筑後川水系の河川(提供:椎名まさと)この種は九州にのみ生息する絶滅危惧種で、絶滅危惧種となっている理由としては河川改修があげられますが、ギギとの競合によりアリアケギバチが追いやられている可能性も否定できません。
もともと九州北部においては東部にギギ、西部にはアリアケギバチが見られたようですが、筑後川水系には見られなかったギギが、おそらく放流によって筑後川にやって来ており、実際、筑後川水系においてはギギの勢力が強くなり、アリアケギバチが激減したという話も聞きました。
水槽で飼育していると、ギギはアリアケギバチよりも性格がきついように感じるのも理由でしょうか。
アリアケギバチ(提供:椎名まさと)さらに、関東においても、ギギが定着している河川があります。
ギギは肉食性が強い魚ですので、在来のタナゴやハゼの類など、小魚にとっては脅威となってしまいますし、漁業被害が起こる可能性もあります。ギギの飼育は楽しいですが、放流は慎まなければなりません。
(サカナトライター:椎名まさと)
謝辞と参考文献
今回のギギの採集につきましてはX(旧Twitter)のハンドルネーム「バナンさん」さんにお世話になりました。ありがとうございました。
榮川省造. 1982. 新釈 魚名考.青銅企画出版.箕面.
藤井琉穂・藤井智畝・藤井俊介. 2025. 佐賀県筑後川水系からの国内外来種ギギの記録. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 55: 6?8.
藤岡康弘・川瀬成吾・田畑諒一 編. 2024. 琵琶湖の魚類図鑑.サンライズ出版.彦根.
中坊徹次編. 2013.日本産魚類検索 全種の同定 第三版.東海大学出版会.秦野.