ウナギはおいしく、スタミナがつく魚として日本で親しまれてきました。しかし近年は資源量の減少が深刻化し、漁獲量は年々減っています。
「日本最後の清流」としても知られる高知県・四万十川の天然ウナギも例外ではなく、今ではめったに口にできない存在となりました。
筆者が学生時代に四万十川周辺をツーリングしていた頃は、天然ウナギを目にする機会がまだありましたが、現在はウナギの減少について強く意識せざるを得ません。
それでも、限られた条件のもとで大切に扱われてきた四万十川の天然ウナギには、他では味わえない魅力があります。ウナギの現状やその背景を含めて、四万十川の天然ウナギについて紹介します。
四万十川の天然ウナギ
四万十川の天然ウナギ(提供:PhotoAC)四万十川における天然ウナギの漁期は4月1日から9月30日。
「はえなわ漁」や「コロバシ漁(別名:地獄漁)」、そして珍しい伝統漁法「いしぐろ漁」などで取りますが、年の漁獲高は3トン(農林水産省 統計表「令和6年度内水面漁業都道府県別魚種別漁獲量」)しかなく、非常に希少です。
そのため、養殖ウナギの2~3倍ほどの価格となっています。
今後、さらに減少していくと考えられるため、とても貴重かつ希少になっていくことが予想されます。
四万十川のウナギ漁獲高が減少する理由
四万十川には大規模なダムはありませんが、堰が設けられている区間もあり、場所によってはウナギの遡上が難しくなっている可能性があります。ただし、これだけで、近年見られるウナギの著しい減少を説明するのは難しいと考えられます。
ウナギが激減している背景には、複数の要因が重なっているとみられています。
四万十川では道路拡張のための護岸工事が多く行われている(提供:PhotoAC)たとえば、黒潮の蛇行など海洋環境の変化によって四万十川へ回帰するウナギの数自体が減少していること、河川の護岸工事などにより生息場所が失われていること、さらに農薬などの化学物質の影響によってウナギが弱っている可能性などが挙げられます。
また、シラスウナギの遡上数に対して捕獲数が多すぎる可能性も指摘されており、人為的な影響についても無視できません。
四万十川の天然ウナギと養殖ウナギ
天然ウナギは減少の一途をたどっていますが、四万十川ではまだ漁獲があり、食べることは可能です。また、四万十で養殖されるウナギのほとんどは、四万十川の河口域で取れたシラスウナギを養殖したものです。
一方、天然ウナギと養殖ウナギには大きく違うところがあります。
天然ウナギは自然界で弱肉強食の環境下で生育するため、養殖ウナギと比べて脂が少なめで、肉質も引き締まっていて少し固めです。養殖ウナギは栄養豊富な餌を与えられており、脂のりが良いのが特徴です。
四万十川河口域のシラスウナギ漁(提供:PhotoAC)また、風味が決定的に異なります。
養殖ウナギは養殖池の水質や与えるエサによって、脂ののりはよくても大味になる傾向があるといいます。
一方、四万十川の天然ウナギは「日本最後の清流」と呼ばれる水質のよい四万十川で育ち、その環境に生息する自然のエサ(ミミズやエビ、小魚など)を食べるため、臭みもなく繊細な風味を持つのです。
ただ、個体差が大きいため、全ての天然ウナギがおいしいとは限らないのが難点といえるでしょう。
食べたい四万十川の天然ウナギの蒲焼
近年、四万十川の天然ウナギは小型化が進んでいるといわれていますが、まれに大型のものが水揚げされることもあるそうです。
そうしたウナギは肉厚で、皮には弾力があり、身は引き締まっていて非常に味わい深いと聞きます。
天然ウナギのうな丼(四万十川産ではありません)(提供:PhotoAC)筆者はウナギ料理といえば、まず蒲焼きを思い浮かべます。白焼きも魅力的ですが、やはり蒲焼きで味わってみたいという気持ちは正直なところです。
完全養殖が普及すれば、ウナギを食べるという行為そのものは将来的に持続可能になるかもしれません。
それでも、四万十川という環境で育った天然ウナギには、その土地ならではの背景や価値があります。もし口にするのであれば、その希少性や現状を理解したうえで向き合いたいものです。
四万十川ではウナギの伝統漁法を体験できる企画も行われています。食べることだけでなく、ウナギと川との関係を知る機会として、こうした体験に参加してみるのも一つの方法でしょう。
(サカナトライター:額田善之)