水産業が盛んな日本では様々な海産物が食べられています。しかし、食用として定着している巻貝となると、その数はあまり多くないようです。
一方、日本よりの南西に位置するベトナムでは多くの巻貝が食用として消費されていることが、和歌山工業高等専門学校のスティアマルガ・デフィン准教授による国際共同研究により明らかになりました。
この研究成果は「Future Foods」に掲載されています(論文タイトル:DNA barcoding of museum-vouchered samples collected from fish markets reveals an unexpected diversity of consumed gastropods in Vietnam)。
食用になる巻貝
四方を海で囲まれた日本では古くから漁業が盛んであり、現在に至るまで様々な水産物が消費されてきまいた。
しかし、食用として定着している巻貝に焦点を当てると、つぶ貝(真ツブ)とも呼ばれるエゾボラやバイ(バイ貝)などに限られており、意外にも種類が少ないと言います。
一方、日本の南西に位置しているベトナムでは非常に多くの巻貝が食用として消費されていることが、和歌山工業高等専門学校のスティアマルガ・デフィン准教授による国際共同研究により明らかになりました。
50種類以上が食用として消費
この研究では、東京大学総合研究博物館に収蔵されているベトナム各地の魚市場から収集された海産の巻貝について、特殊な手法をも用いたDNA解析が実施されています。
ベトナム・ハイフォン市の巻貝(提供:独立行政法人国立高等専門学校機構)その結果、ベトナムでは50種以上の巻貝が食用として消費されていることが示されました。
これはベトナムにおいて、巻貝を原料とする食文化が多様化している可能性を示唆するものだといいます。
検証可能な標本を整備
これまで、ベトナムでは巻貝の多様性について記録したデータが十分ではなかったといいます。そのため、巻貝の資源管理だけではなく、食用としての安全性の確保が難しいという問題がありました。
この課題は、製品が製造から消費者に届くまでの工程を追跡できるトレーサビリティが重要とされています。しかし、追跡で参照するデータベースに誤りがあると、誤同定などが生じる危険性があり、トレーサビリティにおいて大きな課題となっていたのです。
研究では、この課題に対して検証可能な学術標本と高精度のDNA配列の参照データをセットで整備。これはモニタリング等を科学的根拠に基づき進めるための基盤を提供するものとなりました。
ベトナムにおける巻貝食の多様性
今回、DNA解析によりベトナムでは50種類以上の巻貝が食用として消費されていることが示されました。これはベトナムにおいて巻貝の食文化が多様化していることを示唆するものです。
また、この研究は博物館に収蔵されている標本たちが、ネイチャープジティブ(自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること)を実現する上で重要な役割を担っていることを示すものです。
(サカナト編集部)