香里武館長の心に残る幼魚たち
香里武館長が出会ったさまざまな幼魚のなかで、とくに驚いたり印象に残ったりした3種を教えていただきました。
リュウグウノツカイの幼魚
漁港で出会ったなかで印象に残っているのは「リュウグウノツカイ」です。漁港で初めてリュウグウノツカイをすくったときに「深海って足元にあるんだ」と思ったことを覚えています。
深海魚が浅瀬に上がってくることを知ってはいましたが、「深海=200m以深」と聞くと、どこか距離の遠さを感じていました。しかし、足元にリュウグウノツカイが現れたときに、海は横にも縦にも「つながっているんだ」と実感しました。
リュウグウノツカイの幼魚(提供:鈴木香里武館長)あと、生態もユニークです。成長するとタチウオのように立ち泳ぎをするのですが、幼魚の頃は泳ぐ力がほとんどありません。
じゃあどうするのか?というと、細長い腹ビレの先にあるフサフサの器官で水の抵抗を増して流れをつかまえます。
風を受けるパラグライダーのように海流に乗ることで、自力で泳がなくても長旅ができるようにヒレを進化させた省エネスタイル。そこから成長して立ち泳ぎになっていく変化も、とても面白くて印象に残っています。
エボシダイの幼魚
生き様が面白いのは「エボシダイ」の幼魚です。強力な毒をもつ「カツオノエボシ」というクラゲに特化してくっつく深海魚です。
エボシダイの幼魚(提供:鈴木香里武館長)どうせなら「一番強いヤツにくっつこう」という発想が、ジャイアンのそばにいるスネ夫くんのようです。
でも、たまにスネ夫くんもジャイアンに殴られるじゃないですか。自分もやられるかもしれないけど、それでも強い生き物に寄り添って「生き抜いてやろう」っていう根性に勇気をもらえます。
━━エボシダイ自身がクラゲにやられることもあるんですよね?
そうなんです。知り合いのダイバーさんに聞くと、エボシダイやクラゲウオの類は、たまに捕食されるようです。おそらく、身を守るにしても近づきすぎるのは良くないのだと思います。
アカグツの幼魚
幼魚水族館として外せないのが「アカグツ」という深海魚の赤ちゃんです。
体の周りを風船で包んだような姿をしているのですが、あまりにも成魚の姿と違いすぎて、初めて漁港ですくったときはアカグツだと気づきませんでした。
アカグツの幼魚(提供:鈴木香里武館長)特徴的なヒレの形などを見て、もしかしたら「アカグツなのか?」と。可愛らしくてファンタジーな幼魚の姿に衝撃を受け、幼魚水族館のロゴマークはアカグツがモデルになっています。