福井県立大学大学院の鎌倉史帆氏(現奈良女子大)を中心とした研究チームは、福井県の湿地から発見したケイソウ(珪藻)を新種記載しました。
この研究の成果は「Phycological Research」に掲載されています(論文タイトル:Epithemia fragarioides sp. nov. (Bacillariophyta): Formal recognition of a diatom widespread across Japan)。
あらゆる環境に生育するケイソウ
ケイソウは淡水から海水のあらゆる水環境に生育する単細胞生物です。ケイソウのほとんどが光合成をおこない、地球上における1次生産者として重要な役割を担っています。
そんなケイソウの大きな特徴は、細胞がオパールの殻に覆われていること。さらに、この殻の形は種によって様々であることが知られています。
中池見湿地(提供:PhotoAC)第一著者である鎌倉氏は福井大学大学院に在籍中、福井県敦賀市の中池見湿地でケイソウが大量発生しているのを発見。長期にわたり観察を続けた結果、多くのケイソウで見られる長期的なサイズ変化が、ほとんど見られないことを明らかにしました。
これまで付けられてきた名前は間違い?
同じ頃、琵琶湖博物館の大塚泰介氏は立命館大学びわこ・くさつキャンパス内の湿地から見つけた同種のケイソウに頭を抱えていました。
というのも、これまでこのケイソウに付けられてきた名前が、すべて間違いであることに気づいてしまったのです。
しかし、このケイソウに関しては大塚氏が仲間たちと収集してきたサンプルにも、少ししか含まれてなかったといいます。
そこで、大塚氏は鎌倉氏にケイソウの情報提供および詳しい分類学的研究の依頼をしたようです。
イチゴのような凹凸を持ったケイソウ
依頼を受けた鎌倉氏は、走査電子顕微鏡観察を使い、ケイソウの殻の微細構造を観察しました。
その結果、殻表面にはイチゴの表面を彷彿させる、独特な凹凸があることを発見。近縁種とは微細構造が大きく異なることを明らかにしたのです。
さらに、遺伝子の塩基配列を調べることで、このケイソウが既知種と遺伝的に異なることも突き止めされています。
研究チームはこの未記載種のケイソウを Pithemia fragarioides として新種記載。種小名である“ragarioides”はイチゴの属名“Fragaria”に因んでいます。また、タイプ産地として本種が多産する中池見湿地が指定されました。
各地で採取されてきたケイソウも同種
さらに、研究チームは中池見湿地だけでなく、奈良県の池や温泉からも本種を採集。日本各地の湿地や河川から報告されてきた、類似のケイソウも同種であることを明らかにしました。
本種はこれまで、日本各地で採集されてきたにもかかわらず、類似した種と混同され、新種とは考えられていなかったのです。
水辺環境のモニタリングにも貢献
今回の研究により、長いこと類似種と混同されてきたケイソウを新種記載し、日本各地で報告されてきた種も同種であることを明らかにしました。
この成果は、これまで見過ごされてきたケイソウの多様性理解に貢献し、水辺環境をモニタリングする上でも基礎的な知見になるとされています。
(サカナト編集部)