世界の海にはとても綺麗な魚がたくさん生息しており、その大半が主に暖かい海のサンゴ礁で見ることができます。
日本でも沖縄で一年を通して観察でき、また死滅回遊魚(無効分散)と呼ばれる黒潮の影響で、秋くらいまでは和歌山、静岡、神奈川などのエリアで熱帯魚の幼魚を磯や漁港で見ることが可能です。
その代表的な仲間にチョウチョウウオという魚の仲間がいます。チョウチョウウオは熱帯魚採集家の花形と言われる仲間たちで、シックな色合いの近海の磯ではひときわ目立つ存在です。
ただ、この仲間は採集してもほとんどの場合、人工飼料を食べることがありません。ここがチョウチョウウオ飼育の難しさでもあり、楽しさでもあります。
今回、紹介する3種はそのセオリーをくつがえし、簡単に人工飼料を食べる非常に興味深い存在です。
チョウチョウウオと餌付け
チョウチョウウオは自然界で付着藻類や底生の小動物、サンゴのポリプを食べて生活していますが、飼育環境下ではドライフードや粒エサと呼ばれている人工飼料を食べさせることが長期飼育のカギを握るポイントとなってきます。
しかし、この餌付けは非常にハードルが高く、餌付かず死んでしまうことが大半です。
人工飼料(撮影:たつ)さて、このような海水魚の餌付けというものは、基本的な方法やセオリーが世に出ていますが、絶対に成功するという保障はありません。
誤解されやすいのが、採集家やマリンアクアリストが考える“餌付け成功”とは、何か一つでも餌を食べるだけでは不十分であり、長期飼育を目指す上ではドライフード、いわば粒餌への餌付けが全てといっても過言ではありません。
現在、一般的なチョウチョウウオの餌付けはアサリから始まり、徐々に人工飼料を混ぜ込み、ハンバーグのようにして与え慣らしていく──とされていますが、実際はかなり難しく、早ければ1週間、遅いと1ヶ月かかることがあり、1日に何回も与えなければ魚は簡単に痩せてしまいます。時間と体力の勝負となり、非常に神経を使う作業です。
また、不思議なことにアサリがなくなり、殻に塗ったハンバーグが粒エサのみになったにもかかわらず、粒エサ単体では食べないこともあり、頭を悩ませます。以上のことがチョウチョウウオの飼育を難しくしている要因なのです。
餌付けが簡単なチョウチョウウオ科の3種
餌付けが難しいことで知られるチョウチョウウオ科ですが、中には餌付けが簡単な種もいます。
ミゾレチョウチョウウオ
ミゾレチョウチョウウオは餌付けが簡単な魚の代表です。
体色は黄色が入っていますが、純白ではなく灰色を含んだくすんだ白。他のチョウチョウウオと比べてしまうと少し見劣りしてしまいますが、はっきりとしたチョウチョウウオのフォルムをして凛々しい魚です。
ミゾレチョウチョウウオ(撮影:たつ)ショップではフィリピンから入荷し、稀にみることができますが採集することもできます。神奈川や静岡、和歌山などで季節来遊魚として夏から秋に磯で観察が可能です。
定番の種に比べると個体数は少なく、深い所で見ることができ中級者向けの採集魚となってきます。この種は追い込まれると穴や窪みに隠れてしまうため、採集しやすい場所まで追い込み棒などで追い出して、網に誘い込む戦法が有効です。
シラコダイ
シラコダイは、日本近海に生息するチョウチョウウオの仲間で夏や冬も見ることができる温帯種です。
学名は Chaetodon nippon で“ニッポン”と入っています。飼育しやすい個体は夏から秋にかけて磯で採集ができ、他の季節来遊のチョウチョウウオと比べて単独でいることが多いです。
シラコダイ(撮影:たつ)体色は白や銀色と渋めでシックな色合いで、チョウチョウウオの仲間の特徴といえる目を通る太い黒帯が見受けられます。
水族館ではサクラダイ、キンギョハナダイ、キンチャクダイ、ゲンロクダイ、スズメダイなどの魚とセットで近海の深場再す現の水槽に入れられていることが多い魚です。
コクテンカタギ
コクテンカタギはチョウチョウウオのなかでも滅多に採集できない非常に珍しい種です。
潮の流れが強い沖で群れを作っており、日本では小笠原や八丈島でよく見られます。
コクテンカタギ(撮影:たつ)初めて採集するまでは、図鑑の中だけの幻のチョウチョウウオと認識していましたが、一度だけチャンスがありました。
採集家の中では採集情報はおろか飼育情報が全くないですが、餌付けをしてみると上記の種のように飼育1日目からドライフード(人工飼料)を食べた実績がある種です。
この魚はとても記録が少なく、謎も多いことから今後の新たな発見と可能性を予感させる魅力があります。
1
2