ここ最近は、InstagramやXなどのSNSで海の生き物たちの投稿を見かける機会が増えました。
特に人気が高いのが、海の宝石と呼ばれることもある「ウミウシ」。初めて見たときは、こんなに美しい生き物がいたのかと驚きました。
小さく色とりどりの体に、イメージにピッタリなゆっくりとした動き。もし家の水槽で毎日眺められたら、どんなに癒やされるだろう──そう思ったのも束の間、調べれば調べるほど、まさに簡単には手の届かない宝石のような存在だと感じるようになりました。
ウミウシは巻貝の仲間
ウミウシは巻貝の仲間とされる軟体動物です。貝殻が退化して体内に埋没、あるいは消失しているという少し変わった特徴を持っています。
体の大きさは、数ミリから30センチほどまでさまざま。日本国内で確認されている種類だけでも約1200種類にのぼるといわれています。
見た目も、実に多様です。岩や海藻に擬態する地味な色合いのものもいれば、毒を持つ生き物を思わせる鮮やかな色彩をまとった種もいます。
代表的な種類として知られているのが「アオウミウシ」です。青い体にオレンジや黄色の模様が入り、海中でもひときわ目を引く存在です。
アオウミウシ(提供:PhotoAC)また、ウミウシは雌雄同体の生き物です。同種同士であれば繁殖が可能ですが、寿命は短いものが多く、約1年ほど、長くても3年以下とされています。
ウミウシの飼育は驚くほど難しい
ウミウシは潮だまりのある岩場やサンゴ礁、海藻の近くで見られることが多く、岩場や海底をゆっくりと移動しながら餌を探して暮らしています。
ウデフリツノザヤウミウシ(提供:PhotoAC)刺激を与えなければ簡単に飼育できるのでは?と思う人もいるでしょう。しかし、自宅でのウミウシ飼育はほとんど不可能といっても過言ではありません。
大きく3つの理由を紹介します。
特定のエサしか食べない種が多い
ウミウシの飼育が難しい最大の理由はエサです。多くの種が特定の餌しか口にせず、人工飼料はほとんど受け付けないのです。
草食性の種は海藻や植物性プランクトンを、肉食性の種はオキアミやカイメン、ホヤ、小エビなどを食べます。中にはほかのウミウシを捕食する種類も存在します。
つまり、餌そのものを安定して確保し続けることが大きな課題になります。
エサ・環境を維持する難しさ
ウミウシと共に餌となるカイメンなどを一緒に採集してエサを確保するほか、水槽内にライブロックを設置して環境を整えてあげる必要があります。
ライブロックとは、多様な微生物が付着した岩のことで、ウミウシの隠れ家にもなります。
しかし、エサと環境の両方が安定しなければ飼育は長続きしません。難易度は一気に高くなります。
代表的な種であれば既に餌がわかっていることも多いのですが、まだ何を食べるかわかっていない種も存在します。
水質・水温変化に非常に弱い
ウミウシは水質や水温の変化にとても敏感です。
海水魚以上に安定した環境を求める種類も多く、専用のフィルターの設置や頻繁な水換えが欠かせません。
水温は20~24℃程度、さらに強めの水流を好むとされています。「可愛いから飼ってみたい」という気持ちだけで迎え入れるには設備面のハードルは決して低くないでしょう。
さらに、これらの理由から設備が整った施設でも飼育についは研究途上。これといった飼育法が確立していないことも大きな理由です。
見るだけでも十分に愛らしい存在
ここまで、飼育の難しさを紹介してきました。
十分な設備と適切な餌を安定して用意できる自信がない場合、安易に迎え入れるべきではないと感じます。
シラナミイロウミウシ(提供:PhotoAC)一方で、ウミウシを観察する方法はほかにもあります。
近年では水族館での飼育も普及してきました。たとえば、高知県立足摺海洋館SATOUMIや越前松島水族館ではウミウシの展示が行われることがあります(展示状況は時期によって異なります)。
また、磯の生き物観察体験を実施している施設もありますし、自分で磯採集やシュノーケリング、ダイビングなど観察に出かける、という手もあるでしょう。日本近海の磯であれば生息数は少なくなく、また磯でウミウシを観察する愛好家も多いため、情報収集も比較的簡単です。
またSNS等では、よくフィールドでウミウシを観察したり、繁殖や飼育に成功したりといったアカウントが存在します。そうした方たちの写真や動画を通して、その魅力を楽しむこともできます。
手の届かない宝石だからこそ、海の中で輝く姿をそっと見守る、それもまた、ウミウシとの付き合い方のひとつかもしれません。
(サカナトライター:高良あさひ)