三重県産の養殖マダイを活魚のまま鉄道で輸送する実証実験で、輸送したマダイの生存率100%が確認されました。
この実証実験は、日建リース工業株式会社が開発した活魚輸送専用コンテナ「魚活ボックス」を用い、三重県尾鷲市から東京都江東区の豊洲市場まで約35時間にわたる長距離輸送を行いました。
ドライバーの労働時間規制強化などによりトラック輸送力不足が懸念される「2030年物流クライシス」に向けた、新たな水産物流モデルとして期待されます。
深刻化する「物流クライシス」と活魚輸送の課題
日本の物流業界では、ドライバーの労働時間規制強化などを背景に、2030年には輸送能力が約35%不足するとの試算があり、特に専門車両と熟練ドライバーを要する活魚輸送への影響が懸念されています。
2035年には活魚車による水産物輸送量が約30%減少し、ドライバーも約40%減ると予測されており、車両老朽化や担い手不足、高齢化による廃業など構造的な課題が増大。
これまで「必要な時にトラックが手配できる」ことを前提としてきた水産物流は転換点を迎えており、荷主側も「運んでもらえない」ことによる機会損失リスクへの備えが求められているといいます。
鉄道を幹線とした活魚輸送を実施 生存率100%を達成
日建リース工業は2026年2月末、JR貨物と連携し、同社商品の「魚活ボックス」を使った鉄道活魚輸送の検証を実施しました。
魚活ボックスへの積み込み(提供:日建リース工業株式会社)実験では、三重県尾鷲市の養殖場で積み込んだ養殖マダイを、岐阜貨物ターミナル駅経由で東京貨物ターミナル駅まで鉄道で運び、その後トラックで豊洲市場へ届ける一貫輸送を構築。
産地から豊洲の荷受け先に納品されるまでに要した時間は約35時間。一方、輸送中のへい死はなく、到着した魚の状態は「非常に良好」だったといいます。
東京貨物ターミナル駅にて、JRコンテナから魚活ボックスをトラックへ載せ替える様子(提供:日建リース工業株式会社)この結果について、幹線部分を鉄道に置き換えながらも、品質と鮮度を維持できることを示した点が大きな成果となったようです。
活魚輸送専用に開発されたスマートコンテナ
今回の実証で使われた「魚活ボックス」は、活魚輸送専用に開発された“スマートコンテナ”。水中の溶存酸素濃度を常時計測し、規定値を下回ると自動的に酸素を供給する自律制御機能を備えています。
豊洲市場に到着した養殖真鯛(真鯛用カゴ入り/提供:日建リース工業株式会社)標準タイプで約1200リットルの水を収容でき、専用カゴを用いることで真鯛なら1台あたり約160〜200尾を載せることが可能。標準仕様で約11時間、増設により最大約33時間まで対応する設計となっており、長距離輸送でも魚の状態を安定して保てるのが特徴だといいます。
トラックと鉄道を組み合わせた今回のルートでも、こうした機能が生存率100%の達成に寄与したとみられます。
次世代の水産流通インフラへ期待
日建リース工業によると、幹線輸送を鉄道へシフトすることで人手不足の状況下でも安定した輸送力を確保できるほか、二酸化炭素排出抑制など環境負荷の低減にもつながるとしています。
活魚輸送の新たなスタンダードになり得るモデルとして、今後の展開が注目されます。
(サカナト編集部)