東北大学学際科学フロンティア研究所の別所-上原学助教らの研究チームは、キンメモドキの全ゲノムを世界で初めて解読し、発光に不可欠な酵素の遺伝子が存在しないことを明らかにしました。
この研究成果は「Scientific Reports」に掲載されています(論文タイトル:Absence of the luciferase gene in the genome of the kleptoprotein bioluminescent fish Parapriacanthus ransonneti)。
キンメモドキの「盗タンパク質」
生物の形や機能は、自らのゲノムにある遺伝子をもとに作られることが大原則です。
しかし、中には他の生物の能力を盗むことで、本来は自分が持っていなかった能力を発揮する生物もいます。
代表的な生物がハタンポ科に属する小型の海水魚、キンメモドキ Parapriacanthus ransonneti です。
キンメモドキ(提供:PhotoAC)なんと本種は、捕食したウミホタル類から発光酵素「ルシフェラーゼ」を発光器官に取り込むことで、数カ月ものあいだ発光することができるのです。
この特異な現象は過去に、中部大学、米国・モントレー湾水族館研究所、名古屋大が行った共同研究によって「盗タンパク質(kleptoprotein)」と命名されました。
現在、「盗タンパク質」はキンメモドキのみから報告されており、世界的に見ても極め稀で、謎の多い現象として知られています。
しかし、この現象について、「キンメモドキ自身が発光遺伝子を持っているのではないか」という疑問が残っていました。
発光遺伝子は存在しないことが明らかに
そこで、東北大学学際科学フロンティア研究所の別所-上原学助教らの研究チームはあらゆる手法を用いて、キンメモドキのゲノムに発光遺伝子がないか徹底的に探索をおこないました。
その結果、キンメモドキのゲノムのどこにも発行酵素の遺伝子が存在しないことが判明。さらに、発光能力に関わる遺伝子として「ウミホタル類の遺伝子をコピーして取り込む(=水平伝播)」の可能性も検証されましたが、遺伝子の移動を示す証拠も一切見つからなかったといいます。
この結果から、キンメモドキの発光はウミホタル類から盗んだタンパク質によるものだとゲノムレベルで明らかになったのです。
驚異的なメカニズムの解明へ
今回の研究によって、キンメモドキの全ゲノムが解析された結果、DNAのどこにも発光遺伝子が存在しないことが明らかになりました。
口から摂取したたんぱく質は分解されることが常識ですが、キンメモドキは発光酵素を無傷のまま数カ月維持しています。
研究チームは、今後この驚異的なメカニズムの解明が最大の研究テーマとしています。
人間の医療への応用も期待
また、発光酵素を消化から守り保持する仕組みをゲノム情報から取得することによって、人間の医療、家畜・養殖分野での応用が期待されています。
特に医療では、注射でしか投薬できない薬を、口から摂取できる薬へ変えるという、ドラッグ・デリバリー・システムの創出に繋がるとしています。
(サカナト編集部)