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福島県や相模湾でブランド化される<トラフグ> 北上する一方で主産地では不漁が続く

トラフグといえば超が付く程の高級魚。産地としては山口県や福岡県が有名ですが、近年は東京湾や相模湾、さらに北に位置する東北でもトラフグがたくさん獲れることをご存知でしょうか?

この記事では近年生息域が北上しているトラフグについてご紹介します。

そもそもトラフグってなんで高級なの?

トラフグ(提供:PhotoAC)

トラフグはフグ目トラフグ属の魚で、やや沖合に生息。皮膚や筋肉、精巣は無毒ですが、卵巣、肝臓、腸に猛毒テトロドトキシンを持ちます。天然物の大きさは70センチ、重さは11キロになることから、フグの中でも中型~大型な部類と言ってよいでしょう。

日本で食用になるフグの仲間は数種類いますが、中でもトラフグは味がよく非常に高価。「ふぐの王様」とも呼ばれるトラフグは、誰しもが一度は食べてみたい魚のひとつでもあるのではないでしょうか。

トラフグがここまで高価で取引される理由は味だけではなく、稀少価値も含まれています。トラフグは天然資源は減少傾向にあること、また、猛毒を持つフグを調理するためには「ふぐ調理師免許」が必要であることが挙げられます。

トラフグは養殖が盛んに行われている魚

そんな高級魚トラフグですが、実は養殖が盛んに行われており、天然物と比較すると小ぶりではありますが安定した価格で流通しています。長崎県ではトラフグの養殖生産量が日本一で、全国の5割を占めるそうです。「長崎とらふぐ」は冬のプライドフィッシュにも選定されいます。

また、熊本県の水産会社「小川水産」は長崎大学との共同研究によりフグの毒が餌に起因していることを突き止め、無毒のトラフグの養殖に成功しました(株式会社 小川水産)。

トラフグが北上しているワケとは

トラフグは日本各地に分布する種であるものの、暖かい水を好むため山口県や長崎県、福岡県での水揚げが多い魚でした。

しかし、近年では海水温の上昇によりこれまで主な産地ではなかった各地でトラフグの漁獲量が増加しており、東京湾では4~5月、産卵のために集まるトラフグを狙った遊漁船があるほど。相模湾でも、2021年に10トンものトラフグが漁獲されました。相模湾で獲れるトラフグは「天然・釣物 相模のとらふぐ」として、「かながわブランド」にも登録されています。

さらに北に位置する福島県でもトラフグの漁獲量が急増しており、2022年には37トンを超える水揚げがあったそうです(福島沖でトラフグの水揚げ急増 年間水揚げ額が初の1億円超え-福島 NEWS WEB)。福島県では体長35センチ以上かつ延縄漁で漁獲されたトラフグを「福とら」と名付けてブランド化して販売。福島で水揚げされたトラフグは全国へ出荷され、フグの名産地である山口県へも運ばれました。

一方、西部海域では不漁続き

高級魚トラフグの豊漁は喜ばしいことですが、トラフグの主産地である西部海域では近年、トラフグの不漁が続いています。原因は稚魚の育成場の減少や海水温、乱獲が指摘されていますが、はっきりとして原因は不明だそうです。

九州・山口県などでは種苗放流、漁獲規制、サイズ制限が実施されているものの未だ資源の回復には至っていません。

関東や東北では降って湧いたようなトラフグの漁獲量。フグ食文化が薄い北日本ではフグが有毒であることから食用として敬遠されていましたが、漁業関係者や飲食店の取り組みの成果もあり次第に消費量も増えているとのことです。その一方で主産地では資源が枯渇しつつあることを忘れてはいけません。

今後は目まぐるしく変化する海の環境に人々は適応していかなければならないのかもしれません。

(サカナト編集部)

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