かわいらしい歩き方が特徴的なペンギン。しかし、水中に潜るとその印象は一変して、まさに水中を飛ぶようにすいすいと泳ぎます。
水辺や水中で生きていくために進化したペンギンの体の秘密や、その生態を探ってみましょう。
泳ぐために進化した足の秘密とは?
ペンギンは直立二足歩行をする動物と言われることもありますが、実は「直立」しているわけではありません。骨格をみると足は曲がっており、その長い足の大部分は体に埋もれています。
曲がっている足は鳥類全般に通ずる特徴で、地上への着地の衝撃を和らげるためだそう。関節はこの状態のまま固定されており、足を伸ばすことはできません。
そんな鳥類のなかでもペンギンは寒い地方に住んでいるため、熱を逃がさないよう丸く進化したため長い足は羽毛の中に収納されているといいます。この構造により体の出っ張りが少なくなるため、泳ぐときには水の抵抗が小さくなります。
潜水する鳥類の多くは足を推進力として使いますが、ペンギンは泳ぐ際に足を後ろに伸ばし、場合によっては方向を少し変えたりすることで、舵を取ったりブレーキをしたりと器用に使います。
「フリッパー」を翼の代わりに水中を飛ぶ
ペンギンが持つ、短い翼のような部分はフリッパーと呼びます。このフリッパーは、船を動かすオールのように平たく板状になっています。この骨は高密度で重く頑丈で、ペンギンの潜水を支えるのに適しているそう。
フリッパーは泳ぐときに限らず、歩くときにバランスを取ったり、あおいで体の熱を冷やしたり、ボディランゲージで意思を示したりと、生活のためにさまざまな用途があります。
フリッパーを広げて気持ちよさそうに泳ぐ姿は、空を飛べない鳥類であるペンギンが、空を飛ぶように泳ぐように見えることから「水中を飛ぶ」と形容されることも。その泳ぎ方を生かした展示をしている水族館もあります。
ゴーグル代わりにもなる第三のまぶた
ペンギンの目には、「第三のまぶた」と呼ばれるうすく透明な膜があります。これを瞬膜といいます。まぶたは縦にスライドしますが、この膜は横にスライドするので、簡単にまぶたとの区別がつきます。
目を保護する役割を持っており、陸上では乾燥などから目を守る役割、水の中で活動する際には水から目を守りつつ水中を見るためのゴーグルのような役割をします。水族館や動物園でよく観察すると、瞬膜を使ってまばたきしている瞬間を見ることができるかもしれませんよ。
ペンギンの生態は?
陸上ではよちよちと歩く姿がよく知られていますが、短い足では走ることができません。長い距離を移動するときや急いでいるとき、氷の上や砂浜などでは、腹ばいになって足で蹴って滑ります。これをトボガンすべりといいます。
食性は肉食で、魚やイカ、甲殻類などを食べます。主食は種類や住んでいる地域によって異なります。例えば、南極付近にすむペンギンたちにとっては、群れを形成しているオキアミが重要な食料源です。種によっては餌を獲るために深く潜ることもあります。
口の中には歯がなく、両顎にはギザギザの突起がたくさんあります。突起は口の奥に向かっていて、一度口の中に入った獲物を逃さず喉の奥へ運び込まれる仕組みになっています。
鳥の仲間であるペンギンは卵生で、多くのペンギンが繁殖時にコロニーを形成します。つがいが長く維持されることでも有名です。それぞれ繁殖期以外は別の場所で過ごしますが、繫殖期になると同じ巣やコロニーに帰ってきます。一般的には毎年同じ相手を見つけるそうですが、見つからない場合には新たな相手を探すこともあるんだとか。
種によって巣やコロニーの形状や規模はさまざまです。例えば、エンペラーペンギンやコウテイペンギンは巣をつくることはありませんが、コロニーは形成します。
ペンギンたちのコミュニケーション「ディスプレイ」とは
ペンギンたちはコミュニケーションをとるためにディスプレイと呼ばれる行動をとることがあります。
縄張りを守るため、相手に対して警戒したり怒りを表したりする「敵対のディスプレイ」や、つがいがお互いの絆を深めるため、縄張りを主張するための「相互ディスプレイ」、メスの気を引くため、求愛のために行われる「恍惚のディスプレイ」など、さまざまな動きや鳴き声があります。
水族館などでよくペンギンたちを観察すると、より彼らの生活や関係性に近付けるかもしれませんね。
水族館や動物園の人気者であるペンギンたち。その体には色々な秘密が隠されています。体の特徴や生態に目を向けて観察してみると、充実した時間が過ごせるのではないでしょうか。
(サカナト編集部)
(参考:デイビッド・サロモン(2019)ペンギン大図鑑、河出書房新社、出原速夫・菱沼裕子訳)