私たちがスーパーや魚屋で見る魚はブリやアジなど見慣れた種が多いですが、地方へ行けばいつもとは違う魚とも出会うことができます。
北の海に生息するトクビレはよく知る魚とは異なった形の魚で、初めて見る人からすれば魚に見えないかもしれません。この記事ではそんなトクビレについてご紹介します。
トクビレとは
トクビレはトクビレ科に属する海水魚で国内では隠岐、兵庫県・福島県以北の寒い地域に生息しています。本種は浅海から水深269メートルの岩礁や砂底に生息し、主に底引き網や刺し網で漁獲されます。
鱗は固い骨質板になっており、まるで鎧のようになっています。また、吻部下面に生えている数本の髭は他のトクビレ科と識別する上で重要な形質です。本種はトクビレ科の中で比較的大きくなる種で、体長35センチまで成長すると言われています。
雄と雌では形態が異なることが知られており、雄は大きく派手な背びれを持ちますが、雌の背びれは雄と比較すると派手ではありません。トクビレの雄は特に第二背びれが著しく大きくなり、派手な背びれは特鰭(トクビレ)の名前の由来にもなっています。
また、トクビレは体の断面が八角形であることから別名「ハッカク」とも呼ばれており、こちらのほうが通りが良い地域も多く、この呼び名で流通することも少なくありません。
日本のトクビレ科は25種もいるが……
2024年4月現在、日本産のトクビレ科は25種が知られており、ほとんどの種が北方の海に生息しています。トクビレ科は25種がいるものの多くが小型種であるため、トクビレ以外に食用になる種はほとんどいません。辛うじてイヌゴチという近縁種が少量流通しますが、トクビレと比較して漁獲量が少なく関東圏まで流通することは稀です。
なお、イヌゴチはトクビレが「ハッカク」と呼ばれるのに対して「ロッカク」とも呼ばれます。これは本種の断面が六角形をしているためです。
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