琉球列島や小笠原諸島に生息するハタ科魚類は種類が豊富。なかでもバラハタはカラフルな色彩が特徴のハタです。
美味しい魚として知られるバラハタですが、東京都では販売が自粛されています。いったいなぜでしょうか。
バラハタとは
バラハタ(学名Variola louti)は主に小笠原諸島や琉球列島に生息するハタの一種で、全長60cmほどになります。このバラハタの大きな特徴は尾鰭にあり、尾鰭上・下葉がよく伸びて尾鰭後縁が黄色くなっているのが特徴です。
背鰭棘数は9棘で、ユカタハタ属に近いとされています。
食性は肉食で、サンゴ礁の食物連鎖ピラミッドの上位に位置しますが、ヒトやサメに捕食されます。
バラハタは有毒? シガテラ毒とは
さて、このバラハタは重要な食用魚ですが、ある程度成長するとシガテラ毒を有することがあることでも知られています。シガテラ毒はもともとカリブ海の「シガ」と呼ばれる巻貝に由来する毒の名前で、サンゴ礁の渦鞭毛藻類が起源とされており、食物連鎖により蓄積されるようです。
概ね1~8時間、ときに2日後に発症することがあり、主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、筋肉痛、ドライアイスセンセーションと呼ばれる温度感覚の異常などがあげられ、回復には時間がかかります。美味しいバラハタなのですが、中毒のリスクがあるため東京の市場では販売自粛魚とされています。
なおシガテラ毒の起源とされる渦鞭毛藻類は、一説には「サンゴが死滅するとその表面に石灰藻や藍藻が着生して、有毒藻類が付着しやすい環境の場を与えているのかもしれない」とされています。そうなると近年のサンゴ礁を取り巻く環境の悪化も気になるところです。
水温の上昇や開発による赤土の海への流出、開発によるサンゴ礁そのものの破壊などによりサンゴが死滅すれば、シガテラ毒の発生も増加する可能性があり、そうなると魚を安易に食べられなくなってしまうおそれもあります。
バラハタ属のもう1種オジロバラハタ
バラハタ属は2種が知られています。バラハタとオジロバラハタ(学名Variola albimarginata)です。
バラハタとオジロバラハタの見分けは簡単です。オジロバラハタの尾鰭は極めて狭く白く縁どられているのですが、バラハタは広く黄色く縁どられていることによって、見分けることができます。もちろん、オジロバラハタという標準和名や英語名 White-edged lyretail はこれにちなみます。
日本においてはバラハタはより北方にまで生息し、その分布域は伊豆諸島・小笠原諸島、相模湾以南の太平洋岸、琉球列島です。
一方、オジロバラハタは小笠原諸島、愛媛県、長崎県、琉球列島です。海外では両種ともにインド-太平洋に分布していますが、ハワイ諸島のように見られない地域もあります。
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