ヨロイイタチウオは日本周辺のやや深い海に生息している白身の魚です。
背鰭と臀鰭が尾鰭と繋がっていたり、ひげのようなものがあったりと独特な風貌をしていますが、実は美味しい魚で、品ぞろえが豊富な鮮魚店でもたまに見かけるもので「ひげだら」と呼ばれることもあります。
今回はヨロイイタチウオについてご紹介します。
ヨロイイタチウオとは
ヨロイイタチウオ(学名 Hoplobrotula armata)はアシロ目・アシロ科・ヨロイイタチウオ属に含まれるやや深海性の魚類です。細長い体をしていて、背鰭と臀鰭は尾鰭と繋がっているのが特徴。体側には不規則的な斑紋がはいっています。
北海道南部以南の太平洋岸、東シナ海、東アジア沿岸、西太平洋に分布します。
アシロ目と側棘鰭上目
ヨロイイタチウオはしばしば「ひげだら」という名前で呼ばれることもあり、タラの仲間(タラ目)と思われがちですが、実際はアシロ目といい、タラ目とは異なる仲間の魚になります。
タラ目は「側棘鰭上目」と呼ばれるグループの一員で、従来この側棘鰭上目のなかにはアシロ目やアンコウ目も含まれていたのですが、J.Nelsonほかの「Fishes of the world Fifth Edition」(John Wiley & Sons, Inc. 2016年) の中ではアシロ目・アンコウ目ともに棘鰭上目のなかに含まれ(アンコウはフグ目やヒシダイなどと近い関係にあるとされた)、側棘鰭上目とは関係が薄いとされています(ただし分子分類学の手法が中心であり、流動的であることに注意)。
なお「ひげだら」の名称は「ひげのあるタラ」から来ていると思われます。
しかしながら、タラ目の魚にはほとんどの魚でひげを有しているのに対し、ヨロイイタチウオを含むアシロ目の魚のうち、少なくとも日本産でひげを有しているのはイタチウオくらいではないかと思われます。おそらく下顎の後方あたりからながく細い物体が伸びているので、これをひげと間違えたのかもしれませんが、これの正体は腹鰭です。
アシロ目魚類は深海性のものが多い
アシロ目魚類は深海性のものが多く、ヨロイイタチウオも水深100~200メートルほどの場所から多く漁獲され、深海の「入口」付近に生息している魚といえます。しかし、同じアシロ科の魚の中にはかなり深い場所に生息しているものもおり、バケアシロは水深4000~5000メートル、ヨミノアシロに至っては水深8000メートルと極めて深い海に生息しており、水深7000メートルくらいの場所から採集されているシンカイクサウオ属魚類などとともに、最も深い海に生息する魚のひとつとされます。
ヨロイイタチウオ属は3種からなり、日本にはヨロイイタチウオのほか、全身が真っ黒いクロヨロイイタチウオ Hopulobrotula badia が生息しています。もう1種は南アフリカ近海に生息しているフォルスキングクリップ Hoplobrotula gnathopus という45センチメートルくらいの魚です。
1
2