トウゴロウイワシVSギンイソイワシ
九州以北で見られるものはトウゴロウイワシ属のものはトウゴロウイワシ、ギンイソイワシ属のものはギンイソイワシがほとんどであり、両種とも普通に見られる魚です。
しかしながらトウゴロウイワシとギンイソイワシは、体側から見分けるのは困難です。
このわかりにくい2種を見分けるには腹部、肛門の位置を見る必要があります。トウゴロウイワシの肛門は腹鰭の後端よりも前に開きますが、ギンイソイワシの肛門は腹鰭後端よりも後ろに開きます。
ほかにも前上顎骨上向突起の長さなどに違いがありますが、一般的に釣れた個体を見分けるのであれば、肛門の位置関係を見たほうが無難といえそうです。なおギンイソイワシ属であっても一部、肛門は腹鰭の端よりもわずか前方に位置するものがいます(オキナワトウゴロウや、Hypoatherina klunzingeri など)。
トウゴロウイワシを食べる
トウゴロウイワシ科の魚は、釣りの餌として使われることがあります。肉食魚を釣るのに生きたイワシを使うこともありますが、イワシの仲間は漢字で「鰯」と書くように弱りやすく、それよりも丈夫なトウゴロウイワシ科の魚を使うことがあります。
一方琉球列島に生息するオキナワトウゴロウについては、具志堅(1972)によれば、「カツオの食いつきが悪くあまり喜ばれない」とのことです。
食用としては、トウゴロウイワシ科の魚はニシン目のイワシ(マイワシやウルメイワシ、カタクチイワシなど)と比べると、鱗が硬くて骨も多いことから、あまり食用にはされていません。実際に魚屋さんでもお目にかかることはほとんどない種といえます。
しかし、このトウゴロウイワシを釣った後、頭・鱗・内臓をとって揚げると非常に美味でした。トウゴロウイワシ科の魚は釣り人しか味わえない魚。釣れたらぜひ、食べてみてほしいと思います。
(サカナトライター:椎名まさと)
参考文献
榮川省造(1982)、新釈 魚名考、青銅企画出版、607pp
具志堅宗弘(1972)、原色 沖縄の魚、琉球水産協会、247pp
Sasaki D. and S.Kimura. 2012.Descriptions of two new silversides, Hypoatherina golanii and Hypoatherina lunata, from the Indo-West Pacific (Atheriniformes: Atherinidae). Ichthyol. Res. 60(2): 103?111.
Sasaki D, Kimura S. 2014. Taxonomic review of the genus Hypoatherina Schultz 1948 (Atheriniformes: Atherinidae). Ichthyol Res. 61(3): 207?241.
Sasaki D, Kimura S. 2020. A new atherinomorine genus Doboatherina (Atheriniformes: Atherinidae) with a review of included species. Ichthyological Research 67(2): 264?273.
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