アナゴ科の魚とわたしたち
この項では、アナゴ科の魚とわたしたちの関係について紹介します。
食用としてのアナゴ科魚類
アナゴ科の魚は食用として有名です。煮あなごや蒲焼、白焼きからアナゴ飯、アナゴ寿司まで様々な料理にして食べられています。そのほとんどがマアナゴで、ほか若干クロアナゴやゴテンアナゴといった種も食用とされています。
マアナゴは刺身にして食されることもあります。しかしながら、アナゴ科の魚にもウナギ科の魚などと同様に血清には蛋白毒が含まれており、しっかりと血抜きしないと刺身では食べられません。毒は Ichthyohemotoxin(旧Ichthyotoxin)と呼ばれるもので、これを多量に飲むとヒトを死に至らしめることがあるとされています。
ただ、この毒は熱に弱いとされ、マアナゴは家庭においてはそのほとんどが焼き物や煮アナゴなど、火・熱を通す食べ方で食されており、食品衛生上はほとんど問題とされていません。
アナゴ科魚類の漁法と利用の課題
アナゴの仲間の漁法のひとつとして「筒漁」があります。これはプラスチックなどでできた細長い筒の中に餌を入れてアナゴが入ってきたところを獲る漁法です。アナゴのほか、ウツボなども同じような筒で獲ることがあります。
しかしながらこの筒が沿岸に漂着しているのを見ることがあります。このような筒はプラスチック製のものも多く、漁具のロスがプラスチック製品の流出の原因の一つでもあることを考えると、注意すべき事象といえます。
アナゴの漁法は筒の他にも釣りや底曳網などがあります。底曳網では特定の魚種を狙うというものではなく、漁獲される魚種のバリエーションに富みますが、アナゴ科魚類も色々漁獲されています。しかしながら市場に出るのはマアナゴ、クロアナゴ、ゴテンアナゴくらいでほかの種はあまり利用されることはありません。
ギンアナゴは天ぷら、アイアナゴやツマグロアナゴなども唐揚げにすると美味であり、このほかの小型種もふくめて食用として利用できるものが多いです。
底曳網漁業というのは海底の環境に大きなダメージを与える漁法であるため、漁期や網の目の大きさなどに規制がありますが、それでも多くの小魚が甲板に揚げられ、海に戻されても死んでしまう魚が多いです。どうせ死んでしまうのなら持ち帰って食用にして利用するのが一番というものです。
水族館・ホームアクアリウムとアナゴ科魚類
アナゴ科魚類は水族館でもよく見られるものです。マアナゴなどは穴の中に入って密着して過ごす習性があり、それを生かして、パイプの中に多数の個体が入っている様子が水族館でよく見られますが、宮城県の「仙台うみの杜水族館」などでは節分の時期に「恵方巻」を模した筒を入れて飼育しており、話題にもなっていました。
また、アナゴ科で忘れてはいけない魚がチンアナゴとニシキアナゴ。この2種は全国の多くの水族館で飼育されており、とくにチンアナゴは水族館の中で最も人気のある生きものの座をイルカやペンギン、クラゲなどと争っています。チンアナゴを家庭の水槽で飼育するということもできますが、食性や独特の習性などから、飼育は簡単! おすすめ! なんていえないのが残念なところです。
(サカナトライター:椎名まさと)
参考文献
榮川省造(1982)、新釈 魚名考、青銅企画出版
橋本芳郎(1977)魚介類の毒、学会出版センター
山田梅芳・時村宗春・堀川博史・中坊徹次(2007)、東シナ海・黄海の魚類誌.東海大学出版会