廃校の危機に瀕していた高校が大復活を果たしたという話を知っていますか?
愛媛県大洲市にある長浜高校は生徒数が減少し廃校の危機にありましたが、日本で唯一の“水族館部”の活動により全国から人が集まるようになりました。
今回は、長高水族館部や月1回だけ無料公開されている長高水族館について紹介します。
限定で一般公開も行っているので、ぜひ訪れてみてくださいね。
愛媛にある長高水族館とは?
愛媛県立長浜高校は、つい2年前までは廃校の危機に直面していました。
しかし、全国から生徒を募集したほか、寮の整備や家賃の補助などを充実させることで志願者が増加。そして、この危機を救ったのが、水族館部の存在と活躍でした。
1999年に同校の重松教諭らが立ち上げた「長高水族館部」は、長浜の海に棲む魚をメインに展示。高校生が魚などの飼育や繁殖を試みつつ、研究を行う世にも珍しい部活動です(「高校生の活躍が学校を救う 長高水族館の取組」-数研出版)。
生徒が一生懸命に飼育した魚たちを月に1回、無料公開して人気を博しており、大洲市の観光名所にもなっています。長高水族館は今年の春までは長浜高校内にありましたが、4月に隣接する保健センターへ移転しました。
長高水族館部の活動と成果
長高水族館部は2014年、「カクレクマノミがなぜイソギンチャクに刺されないか」を解明し、世界から評価されたほか、この成果が多くのメディアに取り上げられました。
カクレクマノミの粘膜内にはMgイオンとCaイオンが多く含まれており、このことがイソギンチャクの刺胞(毒針)を発射させない鍵だったのです。
intel ISEF2015(国際科学技術フェア)の動物科学部門でグランドアワード4等を受賞、日本学生科学賞最高賞である「内閣総理大臣賞」なども受賞した素晴らしい成果といえます(愛媛県立長浜高等学校-長高水族館とは?)。
同じ仕組みを持つクラゲにも応用した「クラゲ予防クリーム」が開発されました(「JELLYS GUARD」-株式会社エイビイエス)。
重松教諭によると、2024年7月現在、在校生徒のうち県外や県内遠隔地から入学した人は61人で、基本的には水族館部に入部しているそうです。なお、全校生徒の約60%が入部するという水族館部の部員数は現在95人で、どんどん増えているといいます。
カクレクマノミの繁殖や研究が主ですが、最近はハマチやクラゲの繁殖や飼育、研究にも挑戦中です。
長高水族館では何を展示している?
長高水族館では、150種2000点の水生生物を飼育しています。可愛い魚や海の生物がいて、とても楽しい水族館です。
筆者が訪れたのはかなり前の話になりますが、上記写真のコブダイはとても人懐っこくて輪くぐりなどの芸も披露していました。「コブダイが芸をするなんて」と驚いた記憶があります。
現在はハマチが芸をしています。その様子は長高水族館の一般見学で観ることができますよ。
長高水族館の目玉展示は?
長高水族館で現在行われている展示の中から、注目の魚・生き物をいくつか紹介します。
カクレクマノミ(学名:Amphiprion ocellaris)
カクレクマノミの特徴は、体の中央部に3本の白色横帯を持つことです。イソギンチャクの中に隠れてたたずむ様子が可愛い魚で、ダイバーや子どもに大人気ですよね。
長高水族館では、多くの種類のクマノミを飼育しています。自分の推しクマノミに出会えるかも……!?
ウミキノコ(学名:Sarcophyton sp.)
ウミキノコの名前の由来は、見た目がまさしく「キノコ」の形をしているから。とても可愛らしい形をしています。イソギンチャクのように見えますが、実は「ソフトコーラル」と呼ばれる柔らかい軟体サンゴの一種です。
造礁サンゴのほとんどは硬い「ハードコーラル」のサンゴ(ミドリイシやハマサンゴなど多数)ですが、サンゴには色々な種類があってびっくりしますね。
ミズクラゲ(学名:Aurelia coerulea)
ミズクラゲは日本近海に生息する普遍的な種類のクラゲ。「体の透明度が高く水と見分けがつきにくいこと」「水分を多く含んでおり水っぽいこと」などが命名の由来といわれています。
毒は弱く、人によっては少し痛みを感じる程度ですが、何回も刺されると納豆アレルギーを誘発する恐れがあるので注意が必要です(「海でクラゲに刺されると納豆アレルギーに!?」-日経Gooday)。
なお、長高水族館ではミズクラゲの繁殖に成功し、飼育と研究を行っています。
長浜高校のマスコットキャラクター「つらいにゃん」
2015年に生まれた長浜高校のマスコットキャラクターが「つらいにゃん」。ネコで有名な大洲市青島から長浜にやって来たそうです。
長高水族館を見学していたところ、カクレクマノミのクマミンに頭をかじられてしまい、そのままのため「痛いにゃん、つらいにゃん」ということだそうです。
長高水族館の無料公開日に会えるかもしれません!
カメレースやタッチ水槽などのイベントもあり
カメレースなど子どもに人気のイベントも実施しています。そのほか、タッチプールでの魚とのふれあいやハマチレースも楽しめます。
イベントは時期によって内容が変わるので、公式ホームページを確認してくださいね。
長高水族館の無料一般公開について
長高水族館は無料一般公開も行っています。
開催は月に1回で、毎月第3土曜日。11時から13時までと、13時からと15時からの2部制で、人数制限を設けたWeb完全予約制です。
公開日の1週間前(第2土曜日午前8時)から予約開始。予約は長高水族館の公式HPからで受け付けています。先着順なので、なるべく早く申し込みましょう。
なお、訪問される際は、外履きを入れる袋と内履きまたはスリッパを忘れず持参ください。
駐車場は港湾緑地駐車場が利用可能。その他注意事項や詳細についても、Webサイトから確認することができますよ。
魚好きにはたまらない学び舎・長浜高校
大洲市は長浜高校の全国枠の募集定員を増やし、下宿先の確保や助成金など他県から入学がしやすい体制を整えています。興味がある人はぜひ長浜高校の公式Webサイトを確認してください。
ちなみに、長浜高校の近くには大洲銘菓である「志ぐれ」(大洲の銘菓「志ぐれ」-大洲市)の名店「稲田菓子舗」が近くにありますよ! 本当に美味しいので、ほっぺたが落ちますよ~。
(サカナトライター:額田善之)