東京都でも見ることができる、メダカによく似た外来種「カダヤシ」。在来種の存在を脅かすとして、特定外来生物に指定されています。
カダヤシの特徴や問題点について解説します。
カダヤシってどんな魚?メダカとはどこが違うの?
カダヤシの由来は「蚊絶やし」。英名も「Mosquitofish」と、蚊を減らしてくれる魚だということが名前からもわかります。詳しい生態やメダカの違いをみていきましょう。
カダヤシは雑食性で色々なところに生息している
カダヤシは北アメリカ東南部が原産の外来種です。1916年に台湾経由で蚊の幼虫を退治するために輸入され、各地へ放流され増加しました。
汚れた水に強く、水田や用水路、平地の池沼・湖、河川下流で流れが緩やかな場所に生息しています。分布範囲は沖縄県から福島県までと広く、ほとんど日本中でみることができます。
雑食性で、「蚊絶やし」の名の通り、ボウフラのような小さな昆虫や、糸状藻類、プランクトンを食べています。同じ環境にすむ魚の仔稚魚も食べてしまうので、生態系への悪影響が懸念されています。
姿かたちがよく似ているメダカとはどこが違うの?
メダカとカダヤシは形こそ似ていますが、分類上では近縁ですらない別系統です。メダカはサンマ・トビウオと同じダツ目に属していて、カダヤシはグッピーと同じカダヤシ目に属しています。
目で区別できるメダカとの大きな違いはひれの形です。メダカは全体的に直線的なひれを持っていますが、カダヤシは丸いひれを持っています。
また、メダカの尻びれがオスメスとも横長の四角形なのに対して、カダヤシではメスの尻びれが縦長で小さく、オスの尻びれは細長い交尾器に変化しています。カダヤシよりメダカの目のほうが大きいことでも見分けられます。
メダカとカダヤシは産卵習性も異なります。メダカは水草に卵を産む卵生ですが、カダヤシはメスのお腹で卵が孵化したあとに直接稚魚を産む卵胎生です。
なぜ特定外来生物に? 在来種を脅かす理由
カダヤシは国によって特定外来生物に指定されています。特定外来生物とは、もともと日本にいなかった外来生物のうち、生態系に被害を及ぼす生物が指定されています。特定外来生物に指定された生物は、飼育・栽培・保管・運搬・販売・輸入などが禁止されています。飼育には環境庁からの許可が必要です。
カダヤシは特に、在来種であるメダカへの影響が懸念されています。メダカに比べ、水質や環境の変化に強く都市化にも適応してしまいます。また、特別な産卵場所も必要とせず、卵を産むこともないため、産卵床を減らす、卵を採取することによって繁殖を防ぐことができず、稚魚の生存率も高まります。これらの理由から、似た生態を持つメダカよりも早く増加してしまいます。
これに加えて、カダヤシはメダカの稚魚や卵を食べてしまうこともあります。特に沖縄県では、メダカがカダヤシに置き換わるなどの事例が報告されています。
カダヤシは世界的にも影響を与える魚として有名
カダヤシは特定外来生物に指定されているだけでなく、国際自然保護連合(IUCN)の種の保全委員会が定めた「世界の侵略的外来種ワースト100(100 of the World’s Worst Invasive Alien Species)」に選定されています。どの国でも、その環境適応力や繁殖力から在来の小型淡水魚を駆逐してしまうようです。
琉球大学は2019年の4月、グッピーがカダヤシを駆逐するメカニズムを解明したと発表(カダヤシはグッピーに交尾され駆逐された ―グッピーを使えば侵略種カダヤシを駆除できる―)しました。グッピーとカダヤシがめったに共存していないこと、共存していても生息割合がどちらかに極端に偏っていたことから研究を始めました。
水槽内実験によると、カダヤシとグッピーのメスが似ているため、グッピーのオスが間違えて交尾することで稚魚が減少したそうです。このように、異なる生物種間の配偶行動によって子や卵の数が減少することを繁殖干渉といいます。
この研究により、グッピーのオスを活用すればカダヤシを根絶できる可能性があることがわかりました。オスだけを放流すれば、グッピーが定着してしまうこともないはずです。
現在、カダヤシの根絶方法はまだ確立されていません。そして、メダカはカダヤシや都市開発による減少で、絶滅危惧II類に選定されています。カダヤシの放流・飼育・販売を防ぐだけでなく、メダカを見ることができる環境を大切にすることが重要です。
(サカナト編集部)