日本の内陸部に位置する長野県では淡水魚の養殖が盛んであり、中でもシナノユキマスは少し変わった魚として知られています。
この記事ではシナノユキマスについてご紹介します。
シナノユキマスとは
シナノユキマス(Coregonus lavaretus maraena)は長野県などで養殖されている淡水魚です。
本種は銀色の鱗と体型がコイ目やニシン目を彷彿させますが、北欧を原産地とする冷水性のサケ科魚類であり、中でもコレゴヌス属という日本では見られないグループに属します。
サケ科の中では鱗が大きく剥がれやすいことや口が小さいことなどが特徴で、これにより日本産のサケ科とは容易に区別することが可能です。
日本に導入されたコレゴヌス属の魚たち
コレゴヌス属には数十種類の種・亜種が含まれており、日本にはこれまで8種のコレゴヌス属魚類が導入されてきた歴史があります。
戦前、1926~1930年には北米産のコレゴヌス属2種(Coregonus clupeaformis、Coregonus olbus)の発眼卵604万粒が現東京都、秋田県、岐阜県などに、ロシアからはCoregonus lavaretus baeriとCoregonus lavaretus maraenaの2亜種が導入されました。
ところが、これらから孵化した仔魚たちは各地の湖に放流されたものの定着には及ばず、姿を消してしまったといいます。
その後の1969~1983年にはCoregonus peled(ペレッド)、Coregonus lavaretus maraena(マレーナ)、Coregonus muksun(ムスクン)、Coregonus migratorius(オームリ)など5種のコレゴヌス属を導入。この内、バイカル湖を産地とするオームリは青森県に導入されました。
なお、青森県に本種が導入された理由は青森とオームリの発音が似ているためだったそうです。
長野県に導入されたコレゴヌス属
長野県には1975年かた数年にわたり、旧チェコスロバキア、旧ソ連からペレッドとマレーナの卵が導入され、1980年には量産のめどが立ちました。
養殖が始まった当初はロシア名である「ペリヤジ」の名で呼ばれていましたが、本格的な生産が開始されてた1983年、雪のように美しい姿と長野県にちなみ長野県知事が「シナノユキマス」と命名。1987年に漁業権が設定され、2000年からはマレーナの採卵をメインとし、現在に至るまで生産を続けています。
また、シナノユキマスは長野県の特産ではありますが、他の地域でもコレゴヌス属の魚が養殖されており、北海道のキタノユキマス、福島県の会津ユキマス、愛媛県のヒメノウオが有名です。
現在、シナノユキマスは長崎県の立岩湖、加和志湖などで放流が行われており、釣りのターゲットとしても親しまれています。もちろん食用としても利用されており、長野県にはシナノユキマスを食べらるお店もあるようです。
身は淡白で臭みがなく、サケのように赤色をしていないことがないことが特徴。味がよく刺身や押し寿司、燻製などで食べられています。
全国的にはまだ知名度の低いシナノユキマスですが、長野県では食用魚として知られるほか、釣りのターゲットとしても普及活動を行っているようです。長野県に行った際にはぜひシナノユキマスを探してみてはいかがでしょうか。
(サカナト編集部)